カレントテラピー 29-11サンプル

カレントテラピー 29-11サンプル page 11/32

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特集●肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療がん治療前心臓治療25日図2治療モデル実験の成功心臓EML4 -ALK発現マウスにALK活性阻害薬である2,4-pyrimidinediamine(10mg/kg/日)を1日1回経口投与した.治療前と....

特集●肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療がん治療前心臓治療25日図2治療モデル実験の成功心臓EML4 -ALK発現マウスにALK活性阻害薬である2,4-pyrimidinediamine(10mg/kg/日)を1日1回経口投与した.治療前と治療開始後25日目の時点でCTスキャンを行い,腫瘍サイズの変化を計測した.左肺に存在した巨大な2個の腫瘍が,治療後はほぼ消失していることが明らかである.〔参考文献5)より引用改変〕法は同キナーゼ陽性腫瘍に著明な臨床効果が期待できるのである.ⅣALK阻害薬の臨床応用crizotinibのみならずアステラス製薬社,中外製薬・ロシュ社,ノバルティス社らもそれぞれ独自のALK阻害薬による臨床試験を開始しており,その治療成績に興味がもたれる.われわれの発見を受けてほぼすべての巨大製薬会社がALK阻害薬の開発に乗り出している.なかでもファイザー社はほかに先駆けて,2008年から独自のALK阻害薬(crizotinib)による肺癌の第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を国外で開始した.Crizotinibは本来METキナーゼの阻害薬として開発されたものであり,METの遺伝子増幅を有する消化器腫瘍に対して第Ⅰ相試験がすでに開始されていた.ファイザー社はわれわれの論文を読み,crizotinibがALKにも強い阻害活性をもっていることから,急遽治験対象を肺癌に変え新たな臨床試験を開始したのである.その成果は2010年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)総会において,第Ⅰ/Ⅱ相試験の結果発表としては例外的にプレナリー発表として報告された6).また,ほぼ同じ内容は2010年末に『New England Journal ofMedicine』誌に公開されている7).その結果は,FISH法とほかの検査法でEML4-ALKが証明された計31例の治療において奏効率が27/31=87%に及び,しかも完全寛解症例が含まれるという目覚ましいものであった.Crizotinib投与に伴う副作用の多くは悪心・嘔吐であったが,多くの症例において治療の経過とともに副作用の症状は軽快したとのことである.現在crizotinibの治験は国際第Ⅲ相試験に移行しており,幸いにも日本も治験対象国に加わり,わが国の患者も国内でcrizotinib治療を受けることができるようになった.またⅤALK阻害薬耐性変異の発見変異EGFR陽性肺癌に対するゲフィチニブ/エルロチニブやBCR -ABL陽性白血病に対するイマチニブはいずれも有効なキナーゼ阻害薬であるが,どちらの場合も薬剤抵抗性となる二次変異が出現することが知られている8),9).では同様にEML4-ALKの場合も耐性変異は出現するのであろうか?われわれは,EML4 -ALK陽性肺腺癌症例においてcrizotinibの臨床試験に参加し当初は著効したものの,約半年後突然再発しcrizotinib不応性となった症例を経験した.本症例の治療前と再発後の肺癌検体を次世代シークエンサーによって解析することにより,再発時にのみEML4-ALKのキナーゼドメイン内に新たな付加変異を2種類発見したのである10).これら変異のひとつはALK内の1,156番目のシステインをチロシンに置換し,もう一つは1,196番目のロイシンをメチオニンに置換する.興味深いことにこれら2種類の変異は互いに別々のcDNA上に存在していたことから,腫瘍内に新たに独立した2種類の細胞クローンが出現したと考えられた.EML4-ALKを導入したBA/F3細胞はEML4-ALKの活性依存性に増殖するが,培養上清にcrizotinibを添加するとその濃度依存性に細胞死が誘導される.ところがC1156YあるいはL1196Mを有するEML4-ALKはどちらもcrizotinib耐性になる.以上より肺Current Therapy 2011 Vol.29 No.11 591031