カレントテラピー 29-11サンプル

カレントテラピー 29-11サンプル page 14/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 29-11サンプル の電子ブックに掲載されている14ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
特集肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療肺癌において期待される新しい治療肺がんに対する免疫療法(免疫細胞療法とがんペプチドワクチン療法)abstract中島*淳肺がんに対する免疫療法は代替療法から根拠に基づ....

特集肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療肺癌において期待される新しい治療肺がんに対する免疫療法(免疫細胞療法とがんペプチドワクチン療法)abstract中島*淳肺がんに対する免疫療法は代替療法から根拠に基づく治療(evidence based medicine:EBM)に進化しつつある.現況では臨床研究として免疫細胞療法とがんワクチン療法が主に行われている.免疫細胞療法とは,自己免疫細胞を体外で培養した後に抗がん作用を有するエフェクター細胞を体内に戻す方法であり,lymphokine-activated killer cell(LAK),T細胞γδ分画,natural killer cell(NK)などの効果が期待されている.がんワクチン療法とは,がん特異的抗原からつくられたワクチンを接種して細胞傷害性T細胞を誘導するものである.がん特異抗原には腫瘍精巣抗原,がん分化・突然変異抗原,過剰発現抗原などがあり,抗原タンパク鎖の一部を構成するペプチドを投与する方法が多く行われている.免疫療法は生体侵襲が少なく安全性が高い治療法であることが特徴だが,有効性については治療効果判定法の検討など今後の課題が残されている.Ⅰはじめに免疫療法は従来がんの代替治療のひとつと位置づけられ,必ずしもevidence based medicine(EBM)に基づくものではなかった.近年がん細胞に対する免疫系の関与が解明されるに従い,がん特異的な免疫療法が現実的となり,臨床試験によってEBMを得ようとする機運が高まっている.現状では免疫細胞療法とがんワクチンが免疫療法の主流となっている.Ⅱがんに対する宿主免疫先天性または後天性の免疫不全状態や,免疫抑制剤を使用している場合がんが比較的高率に発症することなどから,微小な初期段階のがんの排除には免疫機構が関与すると考えられている.しかしがんが成長して肉眼的・臨床的に明らかとなった状態では,ホストの免疫機構はがんを攻撃する能力を失っているようにみえる.まれに進行がんが積極的な治療を行わないまま自然退縮する現象も観察されており,免疫によるがんの治療可能性が示唆されてきた.以前からピシバニールR(OK-432),クレスチンR,レンチナンRなどの保険薬や,多数の非保険薬を用いた免疫療法が行われてきた.このような薬剤はbiologicalresponse modifier(BRM)とよばれるさまざまな機序による抗腫瘍効果があるとされてきた.一方,免疫細胞療法はがんのエピトープを認識・攻撃しうるエフェクター細胞を体外で培養した後に体内に戻す方法であり,がんワクチンはがん細胞がもつ正常細胞とは異なる表面抗原などの物質を自己の免疫機構が認識し,攻撃する作用を増強させるものであり,ともに特異的な免疫反応によるがん細胞傷害を期待するものである.免疫系ががんを認識し傷害させるためには,正常*東京大学大学院医学系研究科呼吸器外科教授Current Therapy 2011 Vol.29 No.11 671039