カレントテラピー 29-11サンプル

カレントテラピー 29-11サンプル page 22/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 29-11サンプル の電子ブックに掲載されている22ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
特集●肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療群に割り付けた無作為化比較第Ⅲ相試験(BR. 21試験)では,エルロチニブはプラセボと比べ有意に生存期間を延長した9).さらにサブグループ解析において,EGFR遺伝子....

特集●肺癌―パラダイムシフトを迎えた肺癌治療群に割り付けた無作為化比較第Ⅲ相試験(BR. 21試験)では,エルロチニブはプラセボと比べ有意に生存期間を延長した9).さらにサブグループ解析において,EGFR遺伝子変異が陰性であっても生存期間延長効果をもたらすことが示された.また,維持療法としてのエルロチニブの有効性を検討したプラセボ比較第Ⅲ相試験(SATURN試験)においてエルロチニブは有意に生存期間を延長しており10),EGFR遺伝子変異陰性NSCLCに限定したサブグループ解析でも生存期間延長効果を認めた.以上から,エルロチニブはEGFR遺伝子変異陽性NSCLCだけでなく,陰性NSCLCに対しても一定の効果を有すると考えられる.日本肺癌学会ガイドラインでは,EGFR遺伝子変異陰性NSCLCに対する2次治療以降の治療選択肢のひとつとされる.一方,ゲフィチニブは2次治療以降のNSCLCに対し,プラセボとの比較で生存期間延長効果を認めなかった(ISEL試験)1).また,東アジア人・腺癌・軽度喫煙者NSCLCの初回治療におけるゲフィチニブの効果を検討した第Ⅲ相試験(IPASS試験)11)では,遺伝子変異陰性群に対するゲフィチニブの奏効率はわずか1%に過ぎず,EGFR遺伝子変異陰性NSCLCに対する適応は事実上ないといえる.3 EGFR-TKIの使い分け前項で述べたように,エルロチニブはEGFR遺伝子変異陽性NSCLCだけではなく,変異陰性NSCLCに対しても2次治療以降で使用されている.一方,ゲフィチニブはperformance status(PS)不良のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する生存期間延長効果が示されており12),全身状態が不良な遺伝子変異陽性NSCLCに対してはゲフィチニブが選択肢となる.ただし,PS不良は後述する急性肺障害・間質性肺疾患の発症のリスク因子とされており,特にPS 3?4においては投与可否について十分な検討が必要である.また,近年,エルロチニブの中枢神経系への良好な移行性が報告されている.ゲフィチニブは血中からの髄液移行性が1%未満であるのに対し,エルロチニブはおよそ5%とされる13).癌性髄膜炎などの中枢神経浸潤に対しては,ゲフィチニブよりエルロチニブのほうが有効かもしれない.4維持療法としてのEGFR-TKI既述のようにエルロチニブは,プラチナ併用化学療法を4サイクル施行後に維持療法として用いた場合,EGFR遺伝子変異の有無にかかわらず,生存期間を延長することが示された(SATURN試験)10).しかし,本試験では後治療におけるプラセボ群でエルロチニブのクロスオーバー率はわずか21%であり,この結果からは真の意味で維持療法におけるエルロチニブ投与が生存期間延長に寄与したのか,それともただ単にどの時期であってもエルロチニブを投与することそのものが生存期間延長に寄与したのか不明である.米国NCCNのガイドラインではエルロチニブによる維持療法を推奨しているが,本邦においてエルロチニブの維持療法の意義は現段階では確立されていないと考える研究者が多い.一方,ゲフィチニブは,プラチナ併用化学療法後に維持療法としてのゲフィチニブの有用性を検討したプラセボ比較第Ⅲ相試験(WJTOG0203)が行われた.その結果,ゲフィチニブ群で主要評価項目である全生存期間において有意な延長を示すことができず,ゲフィチニブの維持療法としての意義は確認できなかった14).5 EGFR-TKIの副作用最大の副作用は急性肺障害・間質性肺疾患と考えられる.急性肺障害は諸外国と比較し明らかに本邦で発症頻度が高く,その発症率はゲフィチニブ・エルロチニブともに数%と考えられる.また,いったん急性肺障害を合併すると3人に1人が致死的となる.このため,これら薬剤を使用中の患者に対しては,発熱・乾性咳嗽・労作時呼吸困難のうちいずれかひとつでも自覚した場合は,すみやかに主治医に連絡を取るように指導しておくことが重要である.発症のリスク因子として,間質性肺炎の既往・男性・喫煙・PS不良などが挙げられる.急性肺障害以外の副作用としては,肝障害・皮膚障害・消化器症状・全身倦怠感などが認められる.特に皮膚障害・消化器症状・全身倦怠感などの副作用は,ゲフィチニブに比べエルロチニブで明らかに強い.これは,ゲフィチニブの推奨投与量が最大耐用量のおよそ1/3に設定されているのに対し,エルロチニブは推奨投与量が最大耐用量とほぼ同程度にCurrent Therapy 2011 Vol.29 No.11 751047