カレントテラピー 29-11サンプル

カレントテラピー 29-11サンプル page 27/32

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概要:
新しい肺癌診療ガイドラインの考え方弘前大学医学部循環器・呼吸器・腎臓内科助教當麻景章弘前大学医学部腫瘍内科教授西條康夫肺癌診療ガイドラインの改訂が2010年10月より順次行われている.日本肺癌学会ホームペー....

新しい肺癌診療ガイドラインの考え方弘前大学医学部循環器・呼吸器・腎臓内科助教當麻景章弘前大学医学部腫瘍内科教授西條康夫肺癌診療ガイドラインの改訂が2010年10月より順次行われている.日本肺癌学会ホームページ上で公開されており,非学会員でも閲覧・ダウンロードが可能である.現在,「集団検診」・「診断」と進行期「非小細胞肺癌」および「小細胞肺癌」の項目が公開されており,他の項目も順次公開予定である.前回改訂からの5年間で肺癌診療は大きく変わり,ガイドラインと実臨床に隔たりを生じていたが,今後はWeb上で更新が行われ,より早いアップデートがされていく見込みである.今回の改訂の特徴として,NCCNガイドラインと同じように病期別に治療選択樹形図が作成されていることが挙げられる.前回までは文章で推奨とエビデンスが細かく記述されていたが,樹形図とすることで,よりみやすく,容易に治療方法が選択でき,実臨床での使いやすさを考慮したものとなっている.「集団検診」・「診断」の内容は前回から大きく変わるものはないが,診療ガイドラインは患者が対象であるのに対し,検診は健康人を対象としていることから,今回の改訂では,「集団検診」の項が独立した章として構成されることになった.一方,治療内容に関しては,特にⅣ期未治療非小細胞肺癌において大きな改訂が行われている.まず,これまでは治療決定においてperformance status(PS)が重要な要素であったが,それに加えて上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異と組織型によって推奨される治療が示されている.これは,EGFR遺伝子変異がEGFR -TKIに対する効果予測因子として確立されたこと,非扁平上皮癌が治療対象となるベバシズマブ,ペメトレキセドが臨床導入されたことを反映している.特にEGFR遺伝子に関しては,検出検査が普及し,変異陽性患者が多い日本独自の特徴的なガイドラインとなった.また,非扁平上皮癌に対する治療に関しては,治療薬が増えて多くの改訂,進歩があったのに対し,扁平上皮癌の治療は前回と変わりなく,今後の新たな治療法の発見が望まれる.初回治療に続けて行う維持療法に関しては,ペメトレキセドとエルロチニブの効果が海外の臨床試験で確認されているが,海外に比べて2次療法の実施率が高い日本での有益性が不透明な点から,今回は標準治療とされなかった.現在もいくつかの臨床試験が進行中であるが,わが国独自のエビデンスが待たれる.PS 3,4の不良例は,これまで化学療法の適応でなかったが,今回はEGFR遺伝子変異陽性例に限りEGFR -TKIを考慮するようになった.ただし,PS不良はEGFR -TKIによる薬剤性肺障害のリスク因子であり,十分な管理と説明が必要である.今回の改訂では,より患者を適切に層別化し,個別の治療を選択することが重要になっている.この傾向は今後も加速していくと考えられ,新たに発見されたEML4 -ALK融合遺伝子に関しても,すでに検出方法,治療薬が開発され,近々,臨床導入される予定であるので,その結果を受けてガイドラインも改訂されると予想される.801052