カレントテラピー 29-7 サンプル

カレントテラピー 29-7 サンプル page 18/28

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増殖を抑制できること6)や高尿酸血症患者は健常者に比し血管内皮機能が低下し,高尿酸血症の治療によって血管内皮機能の改善がみられることを確認している7).つまり,尿酸は尿酸トランスポーターを介し,血管内皮....

増殖を抑制できること6)や高尿酸血症患者は健常者に比し血管内皮機能が低下し,高尿酸血症の治療によって血管内皮機能の改善がみられることを確認している7).つまり,尿酸は尿酸トランスポーターを介し,血管内皮機能低下や平滑筋増殖に関与している可能性がある.この作用が実際の心血管障害に繋がるかどうかが今後の検討課題である.Ⅲ虚血性心疾患における高尿酸血症の意義Bickelらは冠動脈狭窄を有する患者を対象とした場合,血清尿酸値が5.1mg/dL未満の群に比し,7.1mg/dL以上の群では死亡率が5倍であったと報告している8).本邦でも,血清尿酸値が急性心筋梗塞患者の予後推定に有用であると報告されている9).これらの報告によると,末梢循環不全によるキサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase:XO)活性の亢進と腎機能障害が尿酸代謝と予後に影響を及ぼしていると考えられる.虚血性心疾患に合併する高尿酸血症に関する報告は多くないが,高血圧と同様に虚血性心疾患においても高尿酸血症が予後予測因子となる可能性がある.われわれは,狭心症患者の冠静脈血採血において,尿酸の前駆体であるヒポキサンチンが運動時に上昇していることを確認した10).また,重症心筋においてはXOが増加し,冠静脈での尿酸もヒポキサンチンと同様に増加していることから,虚血や心不全などの心筋に負荷がかかったような状態では,心筋において尿酸が産生されていると考えられる.ただし,この心筋におけるプリン・尿酸代謝が血清尿酸値の上昇にどの程度寄与し,虚血性心疾患の病態にどのような影響を及ぼしているかは不明である.最近,アロプリノールによって狭心症患者の運動耐容能が改善するという報告があった11).心筋酸素消費量の低下,アデノシン三リン酸(ATP)供給の増加,血管内皮機能の改善などの機序が討論されており,狭心症におけるXOの関与やアロプリノールの有用性など,今後の展開が期待される.Ⅳ心不全における高尿酸血症の意義高尿酸血症は心不全患者にしばしば認められる合併症である.最近,血清尿酸値は心不全患者の運動耐容能,末梢循環,炎症マーカー,拡張能などと関連していると報告されている.さらに,血清尿酸値は心不全患者の予後予測因子であるという報告がなされ12),心不全における尿酸の病態生理学的意義が注目されている.心不全に合併する高尿酸血症の機序に関しては,尿酸産生増加と排泄低下の両面から考えられている.心不全患者の高尿酸血症は,利尿薬の使用や腎機能とは無関係にXO活性の亢進を示している.利尿薬の使用や腎機能低下は腎臓における尿酸排泄に影響を及ぼすと考えられているが,利尿薬の使用では心不全や腎不全患者の血清尿酸値は有意に変動していないという報告も多い13).つまり,心拍出量の低下に伴う末梢循環不全によるXO基質の増加に加え,XOおよびその活性の増加が高尿酸血症の原因のひとつと考えられている14).一方,腎血流量の低下や乳酸の増加によって尿酸排泄が低下しているという報告もある.われわれの検討では,心不全患者の半数以上に高尿酸血症を認め,血清尿酸値は心不全重症度に従って高値を示し,尿酸排泄低下型が多かった(図1).さらに多変量解析の結果から,インスリン抵抗性,心不全重症度,腎機能などが心不全に合併する高尿酸血症に複合的に関与していた15).Ⅴ心不全に合併する高尿酸血症の治療XO阻害薬であるアロプリノールは高尿酸血症合併の心不全患者の血管内皮機能,末梢血流を改善し,フリーラジカルを減少させたと報告されている16).また,動物モデルおよびヒトにおいて,XO阻害が心筋酸素消費量の減少,収縮機能の改善,リモデリングの改善,脳性ナトリウム利尿ペプチド(brainnatriuretic peptide:BNP)の低下,心筋のエネルギー効率の改善を促したとも報告されている17).さらにアロプリノールは心不全患者の入院と死亡率を改善させている18).これらの効果はXO阻害の血清28590