カレントテラピー 30-11 サンプル

カレントテラピー 30-11 サンプル page 11/36

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脳卒中の再発は約28%減少した1).したがって,脳梗塞の再発予防には降圧療法が推奨され,本邦の脳卒中治療ガイドラインでは脳卒中慢性期の降圧目標として140/90mmHg未満と設定されている.血圧値と脳卒中再発にはJ....

脳卒中の再発は約28%減少した1).したがって,脳梗塞の再発予防には降圧療法が推奨され,本邦の脳卒中治療ガイドラインでは脳卒中慢性期の降圧目標として140/90mmHg未満と設定されている.血圧値と脳卒中再発にはJカーブ現象,すなわち,過度の降圧によって再発率が上昇するという報告がある.特に,アテローム血栓性脳梗塞の最も再発率の低い拡張期血圧は85~89mmHgで,ラクナ梗塞の80~84mmHgに比して高かった2).一方,頭蓋内主幹動脈狭窄患者においても降圧の重要性を示す報告がある.頭蓋内主幹動脈狭窄患者を対象とした抗血栓薬の介入試験Warfarin -Aspirin SymptomaticIntracranial Disease(WASID)研究では,血圧と脳梗塞再発リスクについて検討されたが,収縮期血圧が119mmHg以下の群で脳梗塞再発リスクが高まることはなく,逆に160mmHg以上の群では有意に脳梗塞再発リスクが高かった3).これらの結果から,アテローム血栓性脳梗塞においては症状を観察しながら緩徐に降圧することが必要であるが,最終的には目標血圧まで降圧することが重要と考えられる.2糖尿病糖尿病は,脳梗塞発症の独立した危険因子であり,かつ脳梗塞の再発率も高くする.しかし,糖尿病のコントロールによる脳梗塞の再発予防効果を検討した報告は少ない.心血管イベントの既往,もしくは高リスクのある2型糖尿病患者を対象に,厳格な血糖管理(強化療法)による心血管イベント再発の抑制効果を検証したいくつかの大規模臨床試験では,通常療法に比して強化療法が脳卒中の再発を抑制するというエビデンスは得られていない4).一方,脳梗塞の発症を減少させるには,血糖のコントロールよりも血圧のコントロールが重要であるという報告がある5).3脂質異常症脳卒中の一次予防に関しては,HMG -CoA還元酵素阻害薬(スタチン)による治療が脳卒中の発症予防に重要であることは確立している.しかし,脳卒中の再発予防に対する脂質コントロールの有効性に関するエビデンスは少ない.Stroke Prevention byAggressive Reduction in Cholesterol Levels(SPARCL)研究では,虚血性心疾患がなく,無作為化の前1~6カ月の間に虚血性脳卒中,出血性脳卒中もしくは一過性脳虚血発作(transient ischemicattack:TIA)を発症し,血清LDL -コレステロール値が100~190mg/dLの患者を対象に,アトルバスタチン80mg内服群とプラセボ内服群に割り付け,平均4.9年間追跡した.その結果,主要エンドポイントの致死性,非致死性脳卒中はアトルバスタチン群で16%有意に低下した6).ただし,本試験で使用されたアトルバスタチンの用量が80mgと日本で承認されている上限の20mgの4倍であり,脳梗塞の再発予防には,このような大量投与が必要なのか,低用量でも効果があるのかは不明である.Ⅲ抗血小板療法1アスピリンアスピリンは抗血小板薬のなかでは大規模臨床試験のエビデンスが最も豊富で,費用対効果も高い.Antithrombotic Trialists’Collaboration(ATT)の報告では,アスピリンは脳卒中やTIA既往患者における血管イベントの発生を22%低減する7)と示されている.アスピリンの血管イベント低減効果にはJカーブ現象がみられ,75~150mg/日に最も大きな効果(32%リスク低減)があり,75mg/日未満では有意な効果はないとされた7).ただし,アスピリンによって血管イベントのリスクは1/4ほどしか低下せず,脳卒中予防効果には限界がある.さらに,このようなアスピリンの予防効果の限界に関連して,アスピリンレジスタンス(aspirin resistance:AR)が問題となる.ARの定義についてはコンセンサスが得られていないが,一般的にはアスピリンが本来有している血小板に対する薬理作用が発揮されない(生物学的AR)ために,血管イベントが予防できない(臨床的AR)症例と定義される.Uchiyamaらの検討によれば8),脳卒中またはTIAを疑い,抗血小板薬としてアスピリンのみを投与し,血小板凝集を測定した連続857例において,TXA2依存性のアラキドン酸(arachidonic acid:AA)による血小板凝38Current Therapy 2012 Vol.30 No.111138