カレントテラピー 30-11 サンプル

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脳卒中―変貌する治療・予防戦略未破裂脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤の自然歴を踏まえ,どのように対応するか)京都大学大学院医学研究科脳神経外科助教吉田和道京都大学大学院医学研究科脳神経外科教授宮本享1はじめに....

脳卒中―変貌する治療・予防戦略未破裂脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤の自然歴を踏まえ,どのように対応するか)京都大学大学院医学研究科脳神経外科助教吉田和道京都大学大学院医学研究科脳神経外科教授宮本享1はじめに未破裂脳動脈瘤の保有率は一般的に2~5%とされているが,加齢とともに上昇し,70歳以上では10%前後に達する.わが国では,高齢化社会の到来とMRIの普及により,未破裂脳動脈瘤の診断機会はますます増加するものと推測される.2未破裂脳動脈瘤の自然歴自然歴に関してエビデンスレベルの高い研究はいまだ限られるが,大きさ・部位・形状・人種などにより破裂率が異なるという点は,諸報告間でおおむね一致した見解である.白人を中心とする母集団で実施された国際未破裂脳動脈瘤研究(ISUIA)は,7mm以下の大きさであれば,前方循環に存在する動脈瘤の破裂率が5年間で0%,後方循環の動脈瘤で2.5%(0.5%/年)と,きわめて低い破裂率を報告した.しかし,研究デザインの問題が指摘されており,また,日本やフィンランドでは未破裂脳動脈瘤の破裂率が高いことが報告されていることからも,ISUIAのみに基づいたわが国の診療指針策定には問題がある.本年6月発行の『The New England Journalof Medicine』に掲載された日本の大規模前向きコホート研究(UCAS Japan)によれば,3mm以上の動脈瘤全体の平均年間破裂率は0.95%であった.大きさとともに破裂率は上昇し,5mm未満の動脈瘤(年間破裂率:0.36%)よりも7~9mmの動脈瘤の破裂率は3.35倍に上昇する.部位別では前交通動脈瘤と後交通動脈瘤の破裂率が高く,形状に関してはブレブを有する瘤の破裂率が高かった.3未破裂脳動脈瘤が発見された場合の対応正確な医療情報を示し,治療方針について文書による説明を行う.原則的に,10~15年以上の余命が見込め,5~7mm以上の動脈瘤である場合や,5mm未満でも破裂率の高い特徴を有する場合には予防的手術を検討する.適応は患者の不安など精神的要素も考慮して総合的に判断する.4未破裂脳動脈瘤の治療予防的手術には,頸部クリッピング術とコイル塞栓術がある.前者は根治性が高い反面,全身麻酔を要し,美容上の問題や開口障害など開頭に伴う副作用が生じ得る.後者は局所麻酔でも可能であるが,不完全閉塞や再発はクリッピング術より高く,長期的な画像経過観察が必要である.動脈瘤の大きさ・部位・形状や患者の全身状態などを考慮して治療法を選択するが,開頭術と血管内手術の両者に対応できる施設で検討されるのが望ましい.一方,予防的手術を行わない場合は,喫煙・大量飲酒を避け,高血圧を治療する.半年から1年ごとのMRAまたはCTAによる画像経過観察を行い,増大や形状変化を認めた場合に予防的手術の適応について再検討する.92Current Therapy 2012 Vol.30 No.111192