カレントテラピー 30-11 サンプル

カレントテラピー 30-11 サンプル page 31/36

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概要:
Branch atheromatous disease(BAD)病態とその対応について京都第二赤十字病院脳神経内科部長山本康正1病態穿通枝梗塞では,口径が40?200μmの比較的小径の血管においては,主にlipohyalinosisなどの高血圧性細小....

Branch atheromatous disease(BAD)病態とその対応について京都第二赤十字病院脳神経内科部長山本康正1病態穿通枝梗塞では,口径が40?200μmの比較的小径の血管においては,主にlipohyalinosisなどの高血圧性細小動脈硬化が穿通枝自体に生じて梗塞に至り狭義のラクナ梗塞を形成する.しかし,300?500μmあるいはそれ以上の口径の血管では,穿通枝が近位部または母動脈より分岐する入口部においてアテローム性病変により閉塞する.特に,入口部近傍の閉塞により,穿通枝全域の梗塞を示すものがbranch atheromatous disease(BAD)とよばれている.入口部閉塞とは,母動脈のアテローム硬化,移行部のミクロアテローム,分岐直後のミクロアテロームがある.BADは病理概念であり,レンズ核線条体動脈(lenticulostriate artery:LSA)で入口部閉塞が生じると縦長の梗塞となるため水平断で3スライス以上に及ぶこと,橋傍正中枝(paramedian pontine artery:PPA)入口部閉塞では梗塞が橋底面に達すること,などが画像診断上の定義とされている.BAD型梗塞として頻度はやや少ないが,内包後脚を灌流する前脈絡叢動脈領域梗塞も重要である.2経過・予後BAD型梗塞の頻度は,脳梗塞全体の約10%に及ぶ.さらに,急性期に進行性運動麻痺の経過をとることが特徴である.急性期に進行性運動麻痺を呈する頻度は,穿通枝梗塞全体で約25%,ラクナ型では約10%であるが,BAD型は約40%に及ぶ.一方,LSA領域のBAD型の長期的予後については,狭義のラクナ梗塞やアテローム血栓性梗塞より良好との報告がある.そのため,BAD型は単発型として生じる場合が多いことによると思われる.しかし,PPA領域のBADでは脳底動脈のマイルドなアテローム硬化を基盤とすることが多く,多数の穿通枝が脳底動脈より分岐するため再発は少なくない.またBAD型では,一過性脳虚血発作(transientischemic attack:TIA)が先行する場合もある.特に,LSAの場合BAD型に先行してステレオタイプの片麻痺が何度も起こることがあり“capsular warning syndrome”とよばれている.穿通枝起始部のプラークにより狭窄が生じ,血行力学的な機序で虚血が起こっていることが推察されている.同様の機序のTIAは,PPA領域でも生じ,“potinewarning syndrome”とよばれる.TIAで症状は消失していても,LSAやPPAの領域にわずかな拡散画像高信号を示すことがある.3治療急性期BADは超急性期より積極的な治療介入が望まれる.BAD型はアテロームプラークをベースとする点から,われわれは,超急性期よりアルガトロバン・シロスタゾール・エダラボンを併用するカクテル療法を試み,一カ月後のmodified Rankin Scale(mRS)を有意に改善させることができた.また,カクテル療法にクロピドグレルのloading doseを加えることで,機能予後を改善させることが出来た.94Current Therapy 2012 Vol.30 No.111194