カレントテラピー 30-11 サンプル

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脳卒中―変貌する治療・予防戦略脳梗塞急性期rt -PA静注療法の現状と問題点*平野照之2005年の遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクチベータ(recombinant tissue-typeplasminogen activator:rt-PA)静注療法....

脳卒中―変貌する治療・予防戦略脳梗塞急性期rt -PA静注療法の現状と問題点*平野照之2005年の遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクチベータ(recombinant tissue-typeplasminogen activator:rt-PA)静注療法認可から7年が経過するなかで,市販後臨床試験(J-ACTⅡ)や市販後使用成績全国調査(全例調査;J-MARS)など,アルテプラーゼ0.6mg/kg(欧米標準量の2/3)を用いたさまざまな研究成果が発表され,本邦における本治療法の有用性は確立したといえよう.一方,実地臨床で本治療法の限界(NIHSS?23の重症例,内頸動脈などの主幹動脈閉塞例,など)や問題点も明らかとなり,特に地域格差の解消は喫緊の課題となっている.この間,海外では投与可能時間の延長(発症後4.5時間),Merci RやPenumbra Rなどの血管内治療デバイスの開発,超音波血栓溶解法や,これらを組み合わせたハイブリッド再開通療法,新規薬剤の開発(desmoteplase,tenecteplase)も進んでいる.2012年,本邦でも治療可能時間が延長され,問題解決に向けた取り組みが継続されている.Ⅰはじめに現在,日本で脳梗塞急性期に用いられるアルテプラーゼは,遺伝子組み換えによる組織型プラスミノゲン・アクチベータ(recombinant tissue -typeplasminogen activator:rt -PA)のひとつである.『脳卒中治療ガイドライン』において,アルテプラーゼ静注療法は脳梗塞急性期に行うべきグレードAの治療法として推奨されている.本稿では,脳梗塞に対する経静脈的血栓溶解療法について,歴史的経緯,現状と問題点,および今後の展望について概説する.Ⅱ理論背景と歴史的経緯脳梗塞急性期には不可逆的損傷を被った虚血巣中心部の周囲に,機能障害をきたしているものの救済可能な虚血性ペナンブラが存在する.虚血性ペナンブラの生存期間内に血管内の病的血栓を溶解し,途絶した脳血流をごく早期に再開させれば,理論的には不可逆的障害が回避できる.血栓溶解療法にはいくつかの種類があるが,現在,一般的に用いられているrt -PAは,血栓親和性が高く全身投与であっても病的血栓を選択的に溶解できるという特徴をもつ.日本では1990年代初頭に,世界に先駆けrt -PA静注療法の有用性が報告されている1),2).しかし使用薬剤(duteplase)の特許権を巡る問題により,開*大分大学医学部総合内科学第三講座准教授8Current Therapy 2012 Vol.30 No.111108