カレントテラピー 30-3 サンプル

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脂質異常症―日常診療に必要な知識をまとめようガイドラインに基づいた治療指針*横出正之日本動脈硬化学会は2007年に『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』(以下,ガイドライン2007年版)を発表した.これは当時集積....

脂質異常症―日常診療に必要な知識をまとめようガイドラインに基づいた治療指針*横出正之日本動脈硬化学会は2007年に『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』(以下,ガイドライン2007年版)を発表した.これは当時集積しつつあった,わが国の動脈硬化性疾患研究の成果を十分に取り入れたものであった.また,このガイドラインでは高脂血症に替わり脂質異常症という用語が採用され,またその診断基準や脂質管理目標には従来の総コレステロール(total cholesterol:TC)値に替わりLDLコレステロール(LDL-C)値を用いることとした.また,メタボリックシンドローム,性差,高齢者についての記載を充実するなどの改訂が図られた.日本動脈硬化学会は現在ガイドラインの新たな改訂を進めつつある.本誌が届く2012年春ころには改訂ガイドラインの内容が一部明らかになっていると思われるが,本稿では現行のガイドライン2007年版の基本的な考え方と改訂へ向けての考え方や展望について述べたい.Ⅰはじめに日本動脈硬化学会は2007年に『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』(以下,ガイドライン2007年版)を発表した1).これは2002年のガイドラインから5年ぶりの改訂で,わが国の動脈硬化性疾患の状況に対応することを目指したものであった.生活習慣の変化に伴い日本人の総コレステロール(total cholesterol:TC)値は,1990年には米国とほぼ同じレベルに近づいたが,絶対リスクでみると虚血性心疾患死亡率は世界で最低水準である2).このように,TC値の著明な上昇にもかかわらず心筋梗塞罹患率・死亡率の増加が認められていない背景には,食生活や禁煙,高血圧などの他の危険要因への対応・管理が進んだことも挙げられよう.したがってわが国の動脈硬化性疾患の予防管理指針は冠動脈疾患(coronary artery disease:CAD)死亡高値を背景にしている欧米のそれとは背景が異なり,世界的に最も低いCAD発症・死亡をさらに予防するための,より高い目標を目指したガイドラインであると位置づけられる.日本動脈硬化学会は現在ガイドラインの改訂を進めつつあり,本誌が届く2012年春ころには改訂ガイドラインの内容が明らかになっていると思われるが,本稿では現行のガイドライン2007年版の基本的な考え方と改訂へ向けての展望について述べたい.Ⅱガイドラインの基本理念現行のガイドライン2007年版には複数の重要なポイントがあるが,特に重要な点として従来の「高脂血症」の表記を「脂質異常症」と変更したことが挙*京都大学医学部附属病院探索医療臨床部教授26Current Therapy 2012 Vol.30 No.3206