カレントテラピー 30-3 サンプル

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あるが,多くの危険因子を一挙に解消できる手段でもある.わが国の将来的寿命を考えるうえでも肥満対策が鍵になる.3薬物療法薬物療法については,生活習慣の改善を前提に考慮すべきであるが,高リスク群や二次予防....

あるが,多くの危険因子を一挙に解消できる手段でもある.わが国の将来的寿命を考えるうえでも肥満対策が鍵になる.3薬物療法薬物療法については,生活習慣の改善を前提に考慮すべきであるが,高リスク群や二次予防群ではいたずらに生活習慣改善の時間を長引かせるよりも,場合によっては薬物療法を早期に考慮すべきである.薬物療法については,あくまでも動脈硬化予防のための治療法であることから,治療効果が認められたエビデンスに基づく治療が望まれる.LDL -C低下療法における重要なエビデンスとして欧米のメタ解析がある.ここで取り上げたメタ解析は,スタチンというLDL -Cを低下させる薬剤とプラセボで比較した無作為前向き試験をまとめたものである7),8).このメタ解析から,スタチンによるLDL -C低下療法は総死亡に対しては,統計学的に有意に抑制し,癌による死亡には影響を与えないことが明らかになった.また,心血管疾患に対しても全体として有意な抑制効果を示し,ほとんどの心血管疾患については有意に抑制しているが,脳出血については全く影響を与えないことが明らかになった.また,現行のガイドライン2007年版ではわが国の代表的エビデンスの成果を多く取り入れた.このうちMEGA studyでは約8,000名の高コレステロール血症患者を対象にして,4,000名に食事療法,4,000名に食事療法+スタチンという一次予防試験を行った.その結果,スタチン群でLDL -Cは18%低下し,33%のCADの抑制効果が示された.これはほぼ欧米で得られたエビデンスと同等の結果であった9).また,JELIS studyでは,約18,000名の高コレステロール血症患者を対象に,9,000名にはスタチンのみ,9,000名にはスタチン+エイコサペンタエン酸(EPA)としてEPAの効果をみた10).その結果,約19%のCADの減少が認められた.また,JELIS studyには一次予防と二次予防患者が含まれており,その二群に分けると,二次予防では有意に再発抑制効果が示されたが,一次予防群では有意差が示せなかった.しかし,一次予防でも危険因子の重積する高リスク群に特定すると有効性が示された.このようなわが国の治療エビデンスを基に,ガイドライン2007年版では,リスクの高い患者ではスタチンとEPA製剤の使用を推奨している.4高齢者と女性高齢者の脂質異常症をみた際には,まずは続発性高脂血症を除外する必要がある.また高齢者の多くは多臓器に疾患を有しており,包括的に医療を行うことが求められるが,脂質異常症の患者を診る際も甲状腺機能低下症,糖尿病に加えて薬剤による医原性脂質異常症についても検討する必要がある.特に高血圧を合併している場合には,利尿剤,β遮断薬の服用により病態が悪化していることがあるので留意を要する.高齢者はCAD発症の絶対リスクが非常に高く11),欧州で実施された大規模臨床試験であるPROSPERstudy 12)およびわが国で実施されたPATE study 13)でスタチンの予防効果も確認されている.以上よりガイドライン2007年版では75歳までの前期高齢者は65歳未満の患者と同様に扱うとする一方,75歳以上の後期高齢者に関しては,十分なエビデンスがないことから個々の症例において対処すべきであるとしている.高齢者においても予防の基本は生活習慣の是正であるが,若年者に比べ行動変容が困難であること,運動処方が行いにくい患者が少なくないことなどから,個々の症例に対応したきめ細かな指導が必要である.脂質異常症治療薬の選択に関しては,原則として高齢者においても若年者と同様ではあるが,高齢者は他の疾患の合併率,服薬数が多いことに加えて,加齢による薬物代謝が低下していることに留意する.さらに腎機能の低下などにより,薬物の副作用が出やすい環境にあることを常に念頭に置く必要がある.したがって薬物は低用量から開始するとともに,薬物相互作用を含む副作用に注意が必要である.女性の血清TC値は40歳代後半から上昇し,閉経期に男性を抜いてその後は男性より高値を持続する.米国の代表的疫学研究であるFramingham studyは,女性においても脂質異常症が重要なCADの危険因子であることを示したが,わが国でもNIPPON30Current Therapy 2012 Vol.30 No.3210