カレントテラピー 30-5 サンプル

カレントテラピー 30-5 サンプル page 13/38

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のための術中汚染防止に有用であること,吻合部を便が通過しないことにより術中操作を容易にしたり,安静を保つことなどが挙げられる.また,近年増加している腹腔鏡下手術では,腸管を虚脱させ,術中の視野確保に良....

のための術中汚染防止に有用であること,吻合部を便が通過しないことにより術中操作を容易にしたり,安静を保つことなどが挙げられる.また,近年増加している腹腔鏡下手術では,腸管を虚脱させ,術中の視野確保に良好とされている.しかし,MBPは患者にとってやや負担が大きく,体内の水・電解質バランスを崩したり,脱水や腹痛などを引き起こしたりすることがある.また,腸管内容物が液状化し,むしろ漏出や汚染の原因になる可能性もある.近年,欧米ではMBPに否定的な報告が散見され,CochraneColorectal Cancer Groupによるシステマティックレビュー6)においては,患者がMBPまたは浣腸の使用により利益を得られるというエビデンスはなく,結腸手術では腸洗浄を省くことが可能で,腸洗浄により合併症発生率は低下しないと報告している.また,カナダ大腸外科学会(Canadian Society ofColon and Rectal Surgeons)は14のランダム化比較試験(RCT)と8つのメタアナリシスの結果から,開腹下での待機的結腸切除術では左側であれ右側であれ,MBPを行わないことを強いレベル(grade 1A)で推奨している7).ただし,腹腔鏡下手術や直腸切除術時に省略すべきかは根拠が不十分としている7).本邦では,MBPが術後合併症を予防するという臨床的エビデンスは得られていないものの,慣例として一般的に行われており,省略するためには欧米で行われたRCTの結果を裏づけるための大規模な研究を実施する必要がある.Ⅲ理想的な腸管切離長米国がん研究所(NCI)8)と欧州臨床腫瘍学会(ESMO)9)のガイドラインでは,原発性結腸癌のいずれかの側の正常な長を5cm切除することが吻合部再発を最小化するために適切であるとしている.一方,日本の『大腸癌治療ガイドライン』では腸管の切除は腫瘍から口側,肛門側とも10cm離して行うことが推奨されている10).結腸リンパ流の研究は,1909年のJamieson&Dobson 11)に始まり,腸管に平行する壁在リンパ節,腸管傍リンパ節と,これら腸表1結腸癌治癒切除例5cm以上傍腸管リンパ節転移状況報告者報告年頻度14)山口1990 0.7%Park 15)2009 1.4%17)平井2010 1.1%Hashiguchi 13)2011 1.0~3.2%〔参考文献13)~15),17)より引用改変〕管近傍より中枢に向かう中間リンパ節および主リンパ節に区別される.結腸癌手術のリンパ節郭清は,これらリンパ流の存在する部位を切除するわけであるが,このうち腸管に平行するリンパ流については高度進行癌以外ではほとんど問題にならないともいわれ,日本でも現在の推奨腸管切離長10cmから,より短縮した切離長にしようという動きがある12).Hashiguchiらは結腸癌914例のレトロスペクティブな検討から,5cm以上離れた壁在および腸管傍リンパ節の転移はまれであり,郭清効果も低いことから,5cm以上の腸管切除長は必要ないとしている13).しかし,このようなHashiguchiら13)の報告を含めて,5cmを超える転移は0.7~3.2%14),15)と少ないながら認められるため,全く無視することはできない.また,上行結腸癌の場合には回腸末端間膜内リンパ節に3.6%の頻度で転移を認めるとの報告もあり16),切除長によって手術リスクが変わらないのであれば,安易に腸管切離距離の短縮を行うべきではなく,リンパ節転移が切離端近傍にまで迫っていることは好ましくないと思われる.当院でも根治度A右側結腸癌499例中5例(1.1%)に口側,肛門側ともに5cm以上の転移が認められている(表1)17).Ⅳ適切な切除手順結腸癌切除は,最初に腫瘍部位の腸管を後腹膜の付着部から剥離し,腸管と腸管膜を完全に遊離してから中枢側の血管を露出する腸管剥離先行法(従来法)が多くの施設で標準的に行われている.一方,中枢側血管を先に結紮切離して,最後に腫瘍部位腸管の剥離を行うことで,血液中に散布される腫瘍細胞を減らすという概念があり(no -touch isolation32Current Therapy 2012 Vol.30 No.5406