カレントテラピー 30-5 サンプル

カレントテラピー 30-5 サンプル page 20/38

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概要:
果が報告されている.両レジメンは予後に差はなかったものの,有害事象は明らかに5-FU bolus投与群が強く,結腸癌の術後補助化学療法としてはdeGramont法(LV5FU2療法)が最適と考えられた2).その後,欧米では利便....

果が報告されている.両レジメンは予後に差はなかったものの,有害事象は明らかに5-FU bolus投与群が強く,結腸癌の術後補助化学療法としてはdeGramont法(LV5FU2療法)が最適と考えられた2).その後,欧米では利便性の観点から,経口のフッ化ピリミジン製剤の投与が試みられてきた.StageⅡ/Ⅲ結腸癌に対してテガフール・ウラシル(tegafuluracil:UFT)/LVと5-FU/LV療法(RPMI法)を比較したNSABP C - 06試験では,無病生存期間(disease free survival:DFS)(HR=1.004,95%C I:0.847~1.190),OS(HR=1.014,95%CI:0.825~1.246)ともに同等の成績が得られた3).また,stageⅢ結腸癌を対象にカペシタビンと5 -FU/LV療法(Mayo法)を比較したX - ACT試験でも,DFS(HR=0.86,95%CI:0.74~0.99),OS(HR=0.84,95%CI:0.69~1.01)において同等性が示された4).有害事象に関しては,手足症候群や高ビリルビン血症がカペシタビン群で高頻度だったのに対し,好中球減少や消化器毒性は5-FU/LV群で多くみられた.本邦でも2004年のSakamotoらのメタアナリシスにより,経口フッ化ピリミジン製剤がstageⅠ~Ⅲの根治切除後結腸癌に対して有意にDFSとOSを延長したと報告された5).『大腸癌治療ガイドライン2010年版』にも,5 - FU/LV療法,UFT/LV療法,カペシタビン療法はstageⅢ結腸癌根治切除後に推奨される治療法として記載されている.現在,本邦ではstageⅢ結腸癌を対象として5-FU/LV療法とUFT/LV療法を比較するJCOG0205試験(UMIN000000193)やUFT/LV療法に対するS - 1療法の非劣性試験(ACTS - CC試験:NCT00660894)が行われており,最終解析が待たれる.2000年以降は,5 -FU/LV療法にオキサリプラチン(oxaliplatin:L -OHP)の上乗せ効果を示した試験が複数報告されている.また,StageⅡ/Ⅲ結腸癌を対象にinfusional 5 -FU+LV+L -OHP(FOLF-OX4)療法とde Gramont法の比較試験である6MOSAIC試験)では,stageⅢの3年DFSはFOLFOX群が78.2%,5 -FU/LV群は72.9%(HR=0.77,95%CI:0.65~0.91,p=0.002),6年OSはFOLFOX群が72.9%,5-FU/LV群は68.7%(HR=0.84,95%CI:0.71~1.00,p=0.046)と,FOLFOX群が有意に良好であった.一方StageⅡではDFS,OSともに両群間で有意差が認められなかった.さらに,2009年に報告されたカペシタビン+L -OHP(XELOX)療法と5-FU/LV療法(Mayo法またはRPMI法)を比7較したNO16968(XELOXA)試験)では,3年DFSで70.9%vs. 66.5%(HR=0.80,95%CI:0.69~0.93,p=0.0045)とMOSAIC試験と同程度のHRが得られている.一方,切除不能・再発大腸癌に対して使用される抗癌剤であるイリノテカン(CPT-11)に関しては,次の3つのRCTが報告されている.15 -FU/LV療法(RPMI法)とIFL療法を比較したCALGB89803試験,2ハイリスクstageⅡおよびstageⅢ結腸癌を対象に5 -FU/LV+CPT -11(FOLFIRIなど)療8法と5 -FU/LV療法を比較したPETACC -3試験),3対象をstageⅢハイリスクに限定してFOLFIRI療9法と5 -FU/LV療法を比較したACCORD02試験)で,いずれにおいてもCPT -11によるDFSおよびOSの改善は認められなかった.以上の結果から,現時点で術後補助化学療法として最もOSの改善が期待できるのはFOLFOX療法などのL -OHP併用レジメンといえる.しかしL -OHPに特徴的な有害事象として末梢神経障害があり,上述のMOSAIC試験では術後補助化学療法終了4年後でも15%以上の患者にgrade1/2の神経障害が残存していることが報告されている.しかし,NSAS -10CC試験)ではstageⅢの結腸癌において手術単独群の5年OSが76.7%,UFT群が81.3%と欧米に比べて成績が良い.また,先のJCOG0205試験の中間報告では,stageⅢ大腸癌1,100例の5年OSは約87%であった.本邦では,結腸癌の手術において血管の高位結紮と全結腸間膜切除が一般的に行われているが,欧米ではそれらを伴わない腸間膜切除が主流である.そのためリンパ節の郭清個数に差が生じ,stagemigrationが起こると考えられる11).今後は本邦においてL -OHPを投与すべき症例の絞り込みや,神経障害を軽減するための工夫が必要になってくると思われる.58Current Therapy 2012 Vol.30 No.5432