カレントテラピー 30-5 サンプル

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治療薬解説本剤に特徴的な毒性である血栓塞栓症・出血・高血圧・タンパク尿・消化管穿孔が認められた.時に致死的となるこれらの毒性には,十分な留意と予測に基づいた臨床的配慮が必要となる.以上のように,ベバシ....

治療薬解説本剤に特徴的な毒性である血栓塞栓症・出血・高血圧・タンパク尿・消化管穿孔が認められた.時に致死的となるこれらの毒性には,十分な留意と予測に基づいた臨床的配慮が必要となる.以上のように,ベバシズマブは化学療法剤との併用により,1次治療と2次治療での有用性が報告され,本剤が大腸癌化学療法のkey drugの1つであるという認識を確固たるものにした.米国で行われた市販後研究(BRiTE試験)から,ベバシズマブの維持療法の有用性が認められた.すなわち,ベバシズマブを用いた1次治療の増悪(progressivedisease:PD)後,2次治療以降にもベバシズマブを継続していく有用性が示唆されたのである(bevacizumab beyond first progression:BBP)7).BBPに関しては,ドイツのAIOグループが第Ⅲ相比較試験(ML18147試験)を行っており,2012年1月でプライマリーエンドポイントであるOSにおける優越性が検証されたことがプレスリリースされた.同年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で詳細な結果が報告される予定であり,その内容が注目される.ⅢセツキシマブEGFRはレセプタープロテインチロシンキナーゼの代表格であり,HERファミリーのHER1としても知られている.EGFRは正常組織にも発現しているが,大腸癌をはじめとする多くの上皮性腫瘍において過剰発現している.EGFRがEGFやtransforminggrowth factorα(TGF -α)などのリガンドと結合することで,レセプターの二量化が起こり,レセプターの細胞内チロシンキナーゼドメインが活性化され,これにより,細胞内シグナル伝達が活性化される.細胞内シグナル伝達の代表的な経路はRAS/RAF/MEK/MAPK pathwayとPI3K/PTEN/AKTpathwayであり,これらの経路を通ったシグナルは最終的に核内に伝達され,細胞増殖,アポトーシスの抑制,血管新生などが引き起こされる.セツキシマブはIgG1ヒト-マウスキメラモノクローナル抗体であり,EGFRに特異的に結合することにより,シグナル伝達を阻害し,細胞死を誘導する.また,IgG1抗体であることより抗体依存性細胞障害(antibody-dependent cell -mediated cytotoxicity:ADCC)活性を有することが期待されている.大腸癌では当初2次,3次治療としてCPT -11との併用ならびに単剤で有効性が報告され,その後1次治療としての有用性が明らかとなった.具体的には,1次治療例としてFOLFIRI+セツキシマブのFOL-FIRIに対するPFSの優越性が証明された(CRYS-TAL試験)8).2次治療としてCPT-11+セツキシマブはCPT -11に対してOSでの優越性を示せなかったがPFSでの優越性は明らかであった(EPIC試験)9).さらに,5-FU,L -OHP,CPT -11抵抗性の3次治療として,セツキシマブvs. best supportive care(BSC)の比較試験(NCIC CTG CO.17)が報告され,セツキシマブ群がOS,PFSのいずれも有意に優れていた10).こうした試験の後解析の結果,本剤と腫瘍組織のKRAS遺伝子変異との治療効果における密接な関係,すなわちKRAS遺伝子のstatusがセツキシマブのバイオマーカーとなることが明らかとなってきた.KRAS遺伝子変異症例ではセツキシマブの効果は期待できないので,KRAS遺伝子野生型での投与が推奨される.毒性に関して,ざ瘡様皮疹,皮膚乾燥,皮膚?痒,爪囲炎,裂創などの皮膚障害が必発であることから,本剤投与に当たり,皮膚症状に対するマネジメントが非常に重要である.また,キメラ型抗体であることより,infusion reactionへの配慮も必要となる.Ⅳパニツムマブパニツムマブはセツキシマブとほぼ同様の機序をもつ抗EGFR抗体薬であるが,IgG2抗体であり,完全ヒト化抗体薬であることから,セツキシマブと比べて,ADCC活性を有さず,infusion reactionの頻度が少ないことが知られている.わが国では2010年に承認され,1次~3次治療まで,すべての治療ラインでの使用が可能となっている.重要な試験としては,111次治療FOLFOX4療法との併用のPRIME試験),Current Therapy 2012 Vol.30 No.545783