カレントテラピー 30-6サンプル

カレントテラピー 30-6サンプル page 12/30

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ネスファチン(ヌクレオビンディン2)-24 182 396SPネスファチン1ネスファチン2&3図ネスファチン1の構造〔参考文献1)より引用改変〕Ⅲ脳内におけるネスファチン1の作用点ネスファチン1の大きな特徴は,レプチン受容....

ネスファチン(ヌクレオビンディン2)-24 182 396SPネスファチン1ネスファチン2&3図ネスファチン1の構造〔参考文献1)より引用改変〕Ⅲ脳内におけるネスファチン1の作用点ネスファチン1の大きな特徴は,レプチン受容体に異常を認めるZucker fattyラットにおいても,その摂食抑制作用が認められること,レプチンに対する抗体がネスファチン1による摂食抑制に拮抗しないこと,からレプチン非依存性経路を介してその作用を発揮していると考えられる点である1).一方,メラノコルチン系を遮断するSHU9119前処置によりネスファチン1の摂食抑制が完全に消失することから,メラノコルチン系がネスファチン1の下流に存在すると考えられている1).また,室傍核(paraventricular nucleus:PVN)において,ネスファチンはオキシトシンやバソプレシンなどのさまざまなペプチド作動性ニューロンの神経細胞内に存在することがわかってきた2).なかでも,オキシトシン作動性ニューロンにおいてオキシトシンとネスファチンの共存がはっきりと認められ,オキシトシン作動性ニューロンの近傍にネスファチンニューロンの神経終末の存在が確認されている3).Ⅳネスファチン1の摂食抑制作用(その2)ネスファチンは,膵臓のβ細胞や脂肪細胞といった末梢組織にも発現しており4),5),プロホルモン変換酵素との共存が前提になるが,ネスファチン1も同様に末梢組織に存在することが予測されている.一方,ネスファチン1をマウス腹腔内に暗期直前に投与すると,投与後3時間の摂餌量が用量反応性に抑制されている6).さらに,皮下に投与されたネスファチン1も投与後3時間は,腹腔内に投与されたネスファチン1と同等の摂食抑制効果を呈している6).ネスファチン1の末梢投与により,視床下部の弓状核(arcuate nucleus:ARC)においては,proopiomelanocortin(POMC),コカイン-アンフェタミン調節転写産物(cocaine -and amphetamine -related transcript:CART)やagouti関連ペプチド(AgRP)の遺伝子発現には明らかな変動は認められなかったが6),脳幹部孤束核(uncleus tractussolitarius:NTS)においてcellular oncogene fos(c -fos)の発現が顕著に増加するとともにCARTやPOMCの遺伝子発現が有意に増加した6).一方,これらのネスファチン1の末梢投与の効果は,カプサイシンの前処置で消失した.これらの結果から,末梢由来のネスファチン1が中枢神経系に作用して摂食抑制効果を発揮している可能性が考えられ,末梢由来のネスファチン1は,血液脳関門機能の疎なARCを介して直接的に中枢神経組織へ働きかけて摂食抑制作用を発揮している可能性よりも,迷走神経などを介してNTSなどの脳幹部に伝達された情報が摂食中枢へ伝えられ,摂食抑制効果を発揮している可能性が推測されている6).Ⅴヒトにおけるネスファチン1に関する報告2010年,Liらは早朝空腹時のネスファチン1の血中濃度が,2型糖尿病患者において1型糖尿病患者や健常人に比べて有意に低下していることを報告した7).しかしながら,経口的なブドウ糖負荷ではネスファチン1の急性な変化は認めなかった7).同年,Ramanjaneyaらは血中ネスファチン1レベルがbody mass index(BMI)と正の相関を示すこと,前駆体のネスファチンがヒト脂肪組織に存在することを報告した8).14Current Therapy 2012 Vol.30 No.6496