カレントテラピー 30-6サンプル

カレントテラピー 30-6サンプル page 5/30

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アルタイムに感知し,腸管ホルモンの分泌制御がなされている.前腸(十二指腸,空腸)から分泌されるGIPも,後腸(回腸,大腸)から分泌されるGLP -1も,食後すぐにその分泌が増加する.前腸を食物が通過することが....

アルタイムに感知し,腸管ホルモンの分泌制御がなされている.前腸(十二指腸,空腸)から分泌されるGIPも,後腸(回腸,大腸)から分泌されるGLP -1も,食後すぐにその分泌が増加する.前腸を食物が通過することが,神経を介して後腸に伝達されるとの指摘もある.最近,高血圧の新しい“外科的治療”として,腎交感神経の除神経術が脚光を浴びているが,エネルギー代謝改善を目指した内臓神経の操作術は新たな外科的オプションとなり得るかもしれない.減量手術による摂食量低下は,単に食べた物を一時的に貯める胃がバイパスされることや,腸での消化吸収面積が小さくなるためではなく,グレリンやインクレチンの分泌動態が変わることで,摂食欲求が低下することの寄与も大きいと思われる.最近,肥満症は,脳の「摂食に対する認識」の障害による疾患であるという考え方が生まれている.中枢神経に作用する抗肥満薬が,その副作用のため,遅々として臨床応用が進まないなか,腸管ホルモン動態を変更することで,摂食行動を変えるというオプションは,腸脳連関をうまく利用した新しい治療法を提供するかもしれない.腸管由来の代謝制御因子として,われわれは,胆汁酸と腸内細菌にも注目している.胆汁酸は,血中にも放出され,ホルモンとして褐色脂肪や骨格筋に作用し,甲状腺ホルモンを活性化することでエネルギー代謝を亢進させる.一方腸管内では,腸管内分泌細胞に作用しインクレチン分泌を促進する.最近,腸内細菌のエネルギー代謝における意義に注目されつつあるが,われわれの検討から,胆汁酸の作用発現において腸内細菌が大きな役割を果たしている可能性がある.減量手術は,腸管腔内の酸素濃度を含め腸内環境を大きく変えているはずであり,腸内細菌叢の変化も大きいと思われる.その意味で減量手術は「腸内環境整備」治療ととらえることもできるかもしれない.最近では「脂肪」のとらえ方も,内臓脂肪万能主義から脱却し,研究者の目は「異所性脂肪蓄積」に移っている.私は,さらに,「腸管」からのアプローチといった新しいモジュールの研究も,肥満撲滅治療に向けてきわめて有望であると予感している.参考文献伊藤裕:腸!いい話(朝日新書).朝日新聞出版,東京,2011Current Therapy 2012 Vol.30 No.64897