カレントテラピー 30-6サンプル

カレントテラピー 30-6サンプル page 8/30

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脂肪細胞活性酸素種産生増加前駆脂肪細胞抗酸化酵素発現低下脂肪細胞の肥大マクロファージの浸潤酸化ストレスアディポサイトカイン産生異常インスリン抵抗性メタボリックシンドローム図肥満に伴う脂肪組織の変化と酸....

脂肪細胞活性酸素種産生増加前駆脂肪細胞抗酸化酵素発現低下脂肪細胞の肥大マクロファージの浸潤酸化ストレスアディポサイトカイン産生異常インスリン抵抗性メタボリックシンドローム図肥満に伴う脂肪組織の変化と酸化ストレス肥満に伴って脂肪細胞の肥大とマクロファージの浸潤が起こる.活性酸素種はマクロファージと脂肪細胞から産生され,抗酸化酵素の発現低下によって酸化ストレスが生じる.酸化ストレスはアディポサイトカイン産生異常とインスリン抵抗性を惹起し,メタボリックシンドロームを発症,進展させる.用やインスリン抵抗性を通じてメタボリックシンドロームの病態形成に大きく寄与する12).アディポネクチンはインスリン感受性増強作用,炎症抑制作用を有しており,TNF -αやIL -6,MCP -1,PAI -1は炎症を惹起するアディポサイトカインである.アディポネクチンの血中濃度は全身の酸化ストレスレベルと有意な逆相関を示す2),3).また,脂肪細胞にROSを加えるとアディポネクチン産生が抑制される5).一方で,ROSによってTNF -αやIL - 6,MCP-1,PAI-1の炎症惹起因子の発現は上昇する.すなわち,ROSはアディポサイトカインの産生を変化させることで肥満病態に関与する.酸化ストレスは,他臓器においてもβ細胞のインスリン分泌の抑制,筋肉や脂肪の糖輸送の抑制だけでなく,高血圧や動脈硬化とも関連しており,全身の酸化ストレスの亢進は各臓器の障害を発症,進展させる.Ⅴ酸化ストレス抑制によるメタボリックシンドロームの治療酸化ストレスを解除する方法として,抗酸化物質の摂取,抗酸化酵素の発現誘導,ROS産生酵素阻害の3つの方法が考えられる.抗酸化物質の摂取については,健常人にビタミンC,E,β-カロテン,セレンを含むサプリメントを7年半にわたって投与した前向き試験の結果,試験開始時の血中ビタミンCやβ-カロテン濃度の高い症例ではメタボリックシンドローム発症リスクが低かった.しかし,抗酸化物質の摂取によるメタボリックシンドロームの発症抑制効果は認められず13),臨床的な有効性は確立されていない.抗酸化酵素の誘導についてはNrf2活性化剤の研究が行われている.Nrf2は,酸化ストレスに反応してカタラーゼやGPX,スーパーオキシドジスムターゼ(SOD),Heme oxygenase(HO)-1といった抗酸化酵素群を誘導することで,細胞防御作用を発揮する転写因子である.コバルトプロトポルフィリンは強力なNrf2経路の活性化剤であり,肥満モデル動物にコバルトプロトポルフィリンを投与すると,脂肪組織や大動脈におけるHO -1活性が増加し,ROS産生が低下する.さらに,血中アディポネクチン濃度が増加し,耐糖能も改善することが報告されている14).また,バルドキソロンメチルもNrf2活性化剤であり,腎機能障害をもつ糖尿病症例に投与することで推算糸球体濾過量(estimated glomerularfiltration rate:eGFR)を改善する作用が報告されている15).ROS産生酵素の阻害については動物モデルにおける報告のみが行われている.肥満モデルマウスにNADPHオキシダーゼ阻害薬であるアポサイニンや抗酸化化合物であるMnTBAPを投与すると,脂肪組織の酸化ストレスは解除され,アディポネクチンの発現は上昇し,TNF -αの発現は低下し,糖代謝が改善する5),7).10Current Therapy 2012 Vol.30 No.6492