カレントテラピー 30-8 サンプル

カレントテラピー 30-8 サンプル page 12/28

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心腎連関の病態と治療の進歩―心臓と腎臓からみた循環器疾患高血圧患者における心腎連関の治療*鈴木洋通高血圧症がもとで発症する心腎連関は,心臓では左心室肥大さらには心不全,腎臓では腎硬化症という図式が挙げ....

心腎連関の病態と治療の進歩―心臓と腎臓からみた循環器疾患高血圧患者における心腎連関の治療*鈴木洋通高血圧症がもとで発症する心腎連関は,心臓では左心室肥大さらには心不全,腎臓では腎硬化症という図式が挙げられる.しかしこれに加えて腎臓では腎炎,心臓では冠動脈疾患,さらには糖尿病や脂質異常症などの全身疾患も複雑に関与しており,単純には区分ができなくなっているのが現実の臨床現場である.そのなかの指標としては,微量アルブミン尿が重要となり,これに心機能と腎機能とを合わせさらに血圧の調節をしていくことが求められる.このなかで主に使用されている薬剤としては,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系抑制薬があり,これに加えてなににもまして重要なのが減塩である.この病態においては1日6g未満の減塩が必須である.さらには交感神経抑制薬も適宜使用することが有効であると考えている.Ⅰはじめに高血圧が基礎疾患にあり心臓病変と腎臓病変を発症し,さらにそれが連関し相互に増悪因子となってくる病態は心臓では左心室肥大,心不全,腎臓では腎硬化症が病変として起こっている1)~3).しかしこれらが同時に起こっていることは必ずしも証明し難い.すなわち左心室肥大は心電図や心臓超音波でとらえることができるが,腎硬化症は病理組織診断であり,尿の変化もアルブミン尿が主体であるため血尿などの変化は乏しい.したがって臨床上高血圧を基礎疾患とした心腎連関を考えるうえで重要なのは,アルブミン尿といっても過言ではない4).そこで,本稿ではアルブミン尿特に微量アルブミン尿を中心に据えて高血圧における心腎連関の治療を考える.Ⅱ微量アルブミン尿とは微量アルブミン尿については別稿でも取り上げられているので,そちらを参照していただきたい.従来アルブミンは糸球体の基底膜を通り抜けることはないとされてきたが,最近では,アルブミンは一定量糸球体を通過する可能性が強く示唆されている5),6).そこにかかわる要因として図1にみられるように,電荷のバリアーとサイズのバリアーの2つにより抑制されている.しかし,特に電荷のバリアーに対して内皮細胞であるglycocalyxが大きな働きをしている可能性が指摘されている5),6).このglycocalyxに対して血糖が上昇したりすると電荷のバリアーに変化が生じ,アルブミンが通過してくるというものである.さらにこの通過したアルブミンは図2にみられるように,主に近位尿細管でそのほとんどが再吸収され,そして最終的には分子量1万程*埼玉医科大学腎臓内科教授54Current Therapy 2012 Vol.30 No.8782