カレントテラピー 30-9 サンプル

カレントテラピー 30-9 サンプル page 5/28

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明日を見据えた前立腺癌診療日本人の前立腺癌と検診の意義*伊藤一人2010年の前立腺癌年齢調整罹患率は男性癌の4番目に高く,将来の罹患数は2025年に118,200人にまで増加し,最も多い男性癌となると予測されている.....

明日を見据えた前立腺癌診療日本人の前立腺癌と検診の意義*伊藤一人2010年の前立腺癌年齢調整罹患率は男性癌の4番目に高く,将来の罹患数は2025年に118,200人にまで増加し,最も多い男性癌となると予測されている.また前立腺癌死亡数は増加傾向にあり,2010年は11,600人,2025年には15,700人と男性癌で5番目に多くなると推測されている.日本の前立腺癌の遠隔転移症例比率は依然として13.7%と高率であり,無作為化比較試験において14年間で前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)を用いた検診群の癌死亡リスクが44%低下することが証明されたことから,すべての住民検診と人間ドック検診で受診機会を提供すべきである.PSA検診の不利益としての過剰診断,過剰治療,治療による生活の質(QOL)障害については,軽減の方策として新規腫瘍マーカーやPSA監視療法などの研究が進められている.確実な死亡率低下効果が証明されたPSA検診ではあるが,引き続き日本泌尿器科学会のガイドラインに従い,受診対象者へ最新かつ正しい情報提供を行い,希望者に対して最適な前立腺癌検診システムを提供することが重要である.Ⅰ前立腺癌の疫学的動向:日本と海外の比較・他臓器癌との比較前立腺癌は2008年の世界の罹患数は約899,000人で,死亡数はおよそ258,000人であると予測されている1).また,2030年には年間の前立腺癌の新規発生数は170万人となり,約50万人が死亡するとの予測もある1).2000~2006年の国別の前立腺癌罹患率と死亡率を見ると2),年齢調整罹患率(世界人口で調整;10万人あたり)は欧米先進国が高く,米国の118.2,ニュージーランドの104.4,スウェーデンの97.0の順に高い.アジア諸国の罹患率は低く,日本は15.1,中国は12.0,インドは4.4である.一方死亡率は,カリブ諸国が高く,北欧がそれに続きトリニダード・トバコの53.6,キューバの22.8,ノルウェーの21.3の順に高い.また死亡率もアジア諸国が低く,日本は5.4,香港は4.0,ウズベキスタンは1.6である.正確な前立腺癌罹患率の把握は,癌登録の精度がいまだ不十分なわが国では難しいが,欧米先進諸国と比較して前立腺癌検診の受診率が低く,現時点でも相当数の臨床的に重要な癌が見逃されている可能性が高い3).そのような状況下においても,2010年の前立腺がん年齢調整罹患率(昭和60年のモデル人口にて調整;人口10万人あたり)の推計値は,男性において胃癌,肺癌,大腸(結腸・直腸)癌に続いて第4番目である4).また,罹患数の将来予測では2025年には118,200人まで増加し,男性癌の第1位になると予測されている4).また,日本における前立腺癌死亡数は増加傾向にあり,2010年の推定前立腺癌死亡数は11,600人であ*群馬大学大学院医学系研究科器官代謝制御学講座泌尿器科学准教授8Current Therapy 2012 Vol.30 No.9876