カレントテラピー 30-9 サンプル

カレントテラピー 30-9 サンプル page 7/28

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行われている.臨床的に重要でない癌は,体積が<0.5cm 3との定義があるが12),これまでの臨床的に重要あるいは重要でない癌に関する報告を俯瞰すると13)~16),PSA 4ng/mL前後で発見される癌のおよそ70~90%は....

行われている.臨床的に重要でない癌は,体積が<0.5cm 3との定義があるが12),これまでの臨床的に重要あるいは重要でない癌に関する報告を俯瞰すると13)~16),PSA 4ng/mL前後で発見される癌のおよそ70~90%は臨床的に重要な癌であると推測されている.Ⅲ前立腺癌検診の死亡率低下効果PSA検診の前立腺癌死亡率低下効果を証明した信頼性の高い無作為化比較試験(randomized controlledtrial:RCT)としては,European RandomizedStudy of Screening for Prostate Cancer17(ERSPC)による2009年)18と2012年)の2つの報告と,19スウェーデン・イエテボリのRCTの結果)が重要である.また,地域社会へのPSA検診導入の効果を検証しているオーストリア・チロル地方の実践的な研究においては,20年間の成果が2012年に報告された20).2009年に中間解析結果が発表されたERSPC 17)は,その後2年間の追加経過観察による,中央値11年間の解析結果が2012年3月に発表された18).より長期間の解析結果としては,ERSPCとは独立して1995年に開始され,その後ERSPCに参加し約60%の症例データの提供を行ったスウェーデン・イエテボリ研究の成果が2010年に報告されている19).イエテボリ研究における検診対象は50~64歳の男性で,約2万人を検診群とコントロール群に無作為に分け,検診群では2年ごとの検診受診を推奨し,検診群の約75%の人が実際に少なくとも1回は検診を受診していた.中央値で14年間の経過観察の結果,intention-to -screen解析(当初無作為に振り分けられた群間での解析)によって,検診群はコントロール群と比較し44%死亡率が低下したことが証明され,また検診群の実際の検診受診者とコントロール群を比較すると,56%の死亡率低下効果が認められた.さらに,イエテボリ研究はPSA検診の検診効率についても検証しており,1人の癌死を減らすために必要な検診受診者数は293人,必要な癌診断症例数は12人であったことから,費用対効果比などの詳細な検証は必要であるが,かなり効率の良い癌検診であると期待される.一方,国際共同研究であるERSPCでは最新の研18究結果)において,11年間の経過観察ではあるが,有意な死亡率低下効果が証明されたことは,さまざまな国情の基で前立腺癌検診が行われても普遍的な効果が期待でき,重要な意味をもつ.ERSPCの追加解析では,中核となる年齢層である55~69歳(構成比率:研究対象者の89%)において,検診群はコントロール群と比べintention -to -screen解析で21%,検診群のコンプライアンス補正で29%の死亡率低下効果が証明されたことが研究の本質であるが,2009年の中間報告と比べて,より長期間の追跡において,研究開始からの年数が長いほど,検診群とコントロール群の死亡率の差が大きくなることが明確になったことが重要である.研究開始から10~11年の2年間では,検診群の癌死リスクはコントロール群と比べ,有意差をもって38%低下していた.RCTで証明された癌死亡率低下効果が,地域社会において癌検診を導入した場合にも得られるか否かについては,検診システムの実効性の問題から同様の成果が得られないことも多い.PSA検診に関しては,実践的なPSA検診の有効性評価の検証研究として注目されていた,オーストリアのチロル地方の研究による20年間の成果が最近報告された20).チロル地方では,1988~1992年にはPSAと直腸診による検診が行われ,1993年より45~75歳の住民に対し無料でPSA検診を開始した結果,2005年にはPSA検診曝露率は86.6%に上昇し,2008年時点の実測死亡率は死亡率の予測値に対して64%低下していた.また,国家レベルでの疫学データとしてPSAスクリーニングの前立腺癌死亡率低下効果への関与は,米国の癌登録データにより検証できる.米国では,50歳以上の男性の75%は少なくとも1回はPSA検診を受診しており,1992年以降,前立腺癌死亡率は低下し続け,2006年の死亡率は1990年と比べ39%低下している8).PSA検診の有効性について検証したProstate,Lung, Colorectal, and Ovarian(PLCO)Cancer21Screening研究)の結果は,ERSPCの中間報告の論文と同一雑誌に同時掲載された.約76,000人を検診10Current Therapy 2012 Vol.30 No.9878