カレントテラピー 31-10 サンプル

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66 Current Therapy 2013 Vol.31 No.101063質にできる可能性はきわめて低く,部分代替にその可能性を残すが,欠点は軽減されるだけであり,その欠点を補う原料が必要になる.良き部分を消滅させず悪い部分を隠す物質,それがγ-ポリグルタミン酸である(参考:日本国特許番号第5181669号「呈味改善剤」).過去の減塩品の開発においては,この原料にたどり着けなかったことが美味しい減塩食品を生み出せなかった要因といっても過言ではない.これは日本の伝統的食品である納豆に含まれる成分であるが,納豆はそのまま食すことが多く,料理に利用することは滅多にないために,この現象が発見できなかったのかもしれない.しかしこれだけで従来と同等の塩味が作れるわけではない.前述の酸味の話もそうであるが,沢山の工夫を凝らす必要がある.それが蓄積されるとノウハウになるが,ここではノウハウの一部を料理における減塩の技との比較で紹介する.① だしを効かせて減塩→ 加工食品の場合は足し算ではなく減塩という引き算をする.味噌汁やラーメンスープなどでは,元々配合していた魚介や畜肉エキス系原料でマスクされていた部分が解放されるような現象が起きることがあり,上手く活かすことが大切である.② うま味を効かせて減塩→ 料理では効果的であるが,加工食品にはすでにグルタミン酸がナトリウム塩として配合されているので単純に増やすことは困難である.よって昆布のうま味(グルタミン酸)と相乗効果のある鰹(イノシン酸)や椎茸(グアニル酸)のうま味成分を最適バランスで使用するほうが効果的である.③ 酸味を効かせて減塩→ 酸味ほど味のバランスを変えてしまうものはないため,どういう原料素材を選ぶかが大切である.また酸味を尖らせることなく味をまとめる成分も必要である.④ 香辛料を効かせて減塩→ 唐辛子などは先味の強化に有効であるが,酸味と同じくどの素材を選びどう調和させるかが重要である.料理では薬味ともいうが,葱は麺類のスープの減塩には大きな効果が期待できる.しかしながらナトリウムは食品の味や保存性だけでなく,物性にも大きな影響力をもっている.業界では「麺のコシ」「蒲鉾の足」とよぶが,ナトリウムは小麦やすり身に含まれるたんぱく質を溶かす働きをもっている.ナトリウムを単純に減らせば物理的な現象として硬く弾力のないものになってしまう.硬くボソボソの麺や蒲鉾を食べたいと思う人はいない.ナトリウム(mg) カリウム(mg)乳類普通牛乳41 150ヨーグルト(全脂無糖) 48 170ナチュラルチーズ(カマンベール) 800 120アイスクリーム(普通脂肪) 110 190ソフトクリーム65 190豆乳2 190調製豆乳50 170果実類アボガド(生) 7 720バナナ(生) - 360うめ(生) 2 240温州みかん(普通・生) 1 150りんご(生) - 110小麦類食パン500 97フランスパン620 110昆布類真昆布(素干し) 2,800 6,100利尻昆布(素干し) 2,700 5,300日高昆布(素干し) 3,000 3,200表3カリウムを多く含む食品例(可食部100g当たり)データは文部科学省「日本食品標準成分表2010」より抜粋.