カレントテラピー 31-2サンプル

カレントテラピー 31-2サンプル page 17/34

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治療抵抗性高血圧診療の最前線↑視床下部↓NO産生腎傷害高血圧腎虚血AngⅡ酸化ストレスADMAアデノシン脊髄後索を上行する↑求心性腎神経↑RVLM↑遠心性交感神経活動心臓細動脈腎臓図5本態性高血圧および慢性腎臓病(....

治療抵抗性高血圧診療の最前線↑視床下部↓NO産生腎傷害高血圧腎虚血AngⅡ酸化ストレスADMAアデノシン脊髄後索を上行する↑求心性腎神経↑RVLM↑遠心性交感神経活動心臓細動脈腎臓図5本態性高血圧および慢性腎臓病(CKD)患者で,全身の遠心性交感神経活動が亢進するメカニズムNO合成を阻害する物質.腎臓からの虚血,AngⅡ,酸化ストレスなどの情報が求心性腎神経の電気活動を亢進させ,その情報が脊髄後索を上行して視床下部の電気活動を亢進させる.その情報が今度は下行して,延髄交感神経中枢(RVLM)のニューロンを興奮させ,全身への遠心性交感神経活動を亢進させて血圧を上昇させる.ADMA:asymmetric dimethyl arginine〔筆者作成〕いた.腎臓から視床下部へ上行する求心性経路を遮断するために,あらかじめ腎神経線維を切断したり,脊髄後索を破壊(リゾトミー)しておくと,CKDラットの後部視床下部におけるNEのターンオーバー亢進はみられなかった.全身血圧もシャム手術ラットと同等であった.これらの結果から,本態性高血圧やCKDにおいて腎傷害という情報は,求心性腎神経(図5)をとおり脊髄後索を上行して視床下部に到達し,視床下部の電気活動亢進をひき起こすことがわかった.この情報が下行してRVLMニューロンの活動が亢進し,心臓,腎臓,細動脈などへ行く遠心性交感神経活動が亢進して,血圧が上昇しているのである.それゆえ「腎神経アブレーションで求心性腎神経を焼灼することにより,視床下部の電気活動を低下させ,視床下部→交感神経中枢RVLM→脊髄→全身への遠心性交感神経活動の亢進を抑制したこと」が血圧低下の機序である.これらの結果から,本態性高血圧の第一義の原因は中枢神経系にあるということが理解される.3 CKD,糖尿病,心不全に対しても期待できる腎神経アブレーションは降圧以外にもさまざまな効果をもたらす可能性が報告されている.ダール食塩感受性ラットを片側腎摘しておくと,酸化ストレスのマーカーであるNADPHオキシダーゼが増加して,アルブミン尿,腎機能障害が認められる.これに対して残っている腎臓への神経をあらかじめ切除しておくと,NADPHオキシダーゼおよびアルブミン尿の減少と腎機能改善が認められることを,柏原のグループ14)が報告した.ドイツにおける臨床試験で,88人の治療抵抗性本態性高血圧患者(平均血圧175/96mmHg)に腎神経アブレーションを施行したところ,6カ月後に血圧は平均27/10mmHg低下した.ドップラーで計測した葉間動脈(interlobar arteries)あたりの傷害を表す腎血管抵抗指数(renal resistive index:RI)も低下・改善した.また顕性タンパク尿(1日300mg~3.5gのタンパク尿)の患者の割合が13%から6%へ有意に減少した(図6)15).6カ月間の腎機能は変化がなかった.しかしアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)などに認められるように腎血管抵抗およびタンパク尿を減少させることは長期の腎機能保持につながるので,腎神経アブレーションも腎機能を長期間保護できることが期待される.以上のラットと患者でみられる共通の機序として,輸入細動脈と比較して輸出細動脈により多く分布する遠心性腎交感神経の電気活動をアブレーションで抑制することによって,輸出細動脈を優位に拡張したからであると推察している(図7).それにより糸球体血管の内圧を低下させて,タンパク尿を減らしたと考えられる.Current Therapy 2013 Vol.31 No.218371