カレントテラピー 31-2サンプル

カレントテラピー 31-2サンプル page 7/34

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代わりに自動血圧計およびオシロメトリック法による血圧評価が行われているが,有用性を支持するエビデンスは不足している,以上の3点を挙げている.特に3に関しては,これまでの高血圧のエビデンスの多くは水銀柱血....

代わりに自動血圧計およびオシロメトリック法による血圧評価が行われているが,有用性を支持するエビデンスは不足している,以上の3点を挙げている.特に3に関しては,これまでの高血圧のエビデンスの多くは水銀柱血圧計から生まれてきた.対照的に,現在使用頻度が高くなっている自動血圧計は,市販時にthe Association for the Advancement of MedicalInstrumentation(AAMI)と英国高血圧学会(British Hypertension Society:BHB),あるいは欧州高血圧学会(European Society of Hypertension:ESH)の提唱する精度規格で精度の評価は受けているものの,診察室で用いた場合の予後精度は明らかにされていない.ただし,オシロメトリック法で評価した血圧値は水銀柱で評価した値と基本的には類似しており,前者のほうが白衣効果や測定者によるばらつきも少ないため今後は主流になってくるものと思われる.Ⅲ偽性高血圧高齢者や長期間罹患した糖尿病,慢性腎臓病患者で時折問題になるのが偽性高血圧である.これは,高度な動脈硬化・石灰化により,カフ圧を加えても動脈が圧排されず実際の血圧値より高めに出てしまう場合を示す.これらの問題に対して,初診時には触診法による血圧測定を併用することが勧められているが(Osler’s maneuver),有用性に関しては否定的な意見も多い.65歳以上の高齢者に対して聴診法による血圧測定と侵襲的な動脈圧測定の双方を評価したわが国の報告によれば,偽性高血圧の頻度は1.7%程度で,Osler’s maneuverの有用性も低いと指摘されている3).臓器障害はないが治療抵抗性高血圧とラベリングされるケース,降圧薬の増量により血圧値は低下しないが,日常生活で血圧低下を疑わせる症状が認められるケース,あるいは降圧薬の増量により血圧値は低下しないが腎機能低下を認めるケースなどは偽性高血圧の可能性も念頭に置く必要がある.Ⅳ白衣効果1治療抵抗性高血圧における白衣効果外来診察時の血圧は高値(?140/90mmHg)であるが,生活環境下での血圧は正常の場合(家庭血圧<135/85mmHg,24時間血圧<130/80mmHgないし覚醒時血圧<135/85mmHg)を白衣高血圧,治療中であれば白衣効果とよぶ.治療抵抗性高血圧と診断されたケースの約1/3は白衣効果による可能性が指摘されている.白衣効果による偽性治療抵抗性高血圧の予後は悪くない.治療中高血圧患者を対象にした4Pierdomenicoらの報告)によれば,白衣効果による偽性治療抵抗性高血圧(外来血圧?140/90mmHg+昼間血圧<135/85mmHgと定義)の予後は,平均5年間の追跡期間においては血圧コントロール良好群(外来血圧<140/90mmHg+昼間血圧<135/85mmHgと定義)と同等の心血管イベント発症率であった(図1).では,どのようなケースに白衣効果(白衣高血圧)が多いのか.最近,治療中高血圧患者約7万人を対象にしたスペインの24時間血圧のレジストリデータから治療抵抗性高血圧に関する興味深い知見が報告された5).本研究では外来血圧で治療抵抗性高血圧と診断されたのは約8,000名(12%)で,そのうち37.5%は白衣効果による偽性治療抵抗性高血圧であった.偽性治療抵抗性高血圧の特徴としては,女性,高血圧罹患歴が短い,臓器障害〔心臓肥大,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD),尿中アルブミン〕がない,非喫煙者,非糖尿病,そして高齢者であったが,これらの臨床像をもとに治療抵抗性高血圧患者が真の治療抵抗性なのか,あるいは白衣効果によるものなのかを判断するのは困難であると結論づけている.つまり,治療抵抗性高血圧を診療する際には,診察室外での血圧測定(24時間血圧,家庭血圧)が必須なのである.偽性治療抵抗性高血圧に対する過剰な降圧薬の投与は,低血圧や腎機能低下を引き起こし,また医療費の負担増につながる.英国では24時間血圧測定にかかる医療費と,24時間血圧測定により余分な薬剤投与を回避できるメリットを天秤にかけたとき,5年間で1億ほどの医療費抑制につなが10Current Therapy 2013 Vol.31 No.2122