カレントテラピー 31-4 サンプル

カレントテラピー 31-4 サンプル page 17/30

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心不全の診断と治療の現状―最近のガイドラインの把握と臨床判断新規経口抗凝固薬a b s t r a c t*1*2奥村貴裕・室原豊明心房細動(atrial fibrillation:AF)患者の脳塞栓症予防は,抗凝固療法が基本である.本邦....

心不全の診断と治療の現状―最近のガイドラインの把握と臨床判断新規経口抗凝固薬a b s t r a c t*1*2奥村貴裕・室原豊明心房細動(atrial fibrillation:AF)患者の脳塞栓症予防は,抗凝固療法が基本である.本邦では,これまで半世紀以上にわたり,経口投与可能な唯一の抗凝固薬として,ワルファリンが用いられてきた.しかしながら,ビタミンKの摂取制限や他の薬剤との相互作用,凝固モニタリングの煩雑さなど,患者側・医療従事者側いずれにとっても不便な点が多く,本来適応となるべき症例にも敬遠されてきた経緯がある.近年,古典的抗凝固薬のもつ欠点を改善した新規経口抗凝固薬として,直接トロンビン阻害薬(ダビガトラン)や第Ⅹa因子阻害薬(リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバン)が開発された.また,ワルファリンと比較し,その有効性や安全性を検証する大規模臨床試験の結果が次々に報告され,すでに一部の薬剤は保険適用となっている.しかしながら,新規経口抗凝固薬もまた完全無欠な薬ではない.各薬剤の特徴を十分に理解したうえで,症例ごとに最適な抗凝固薬を選択すべき時代が,まさにすぐそこまできている.Ⅰはじめに心房細動(atrial fibrillation:AF)は心原性脳塞栓症の最大の危険因子であるだけでなく,心不全患者の予後を増悪させる強力な因子でもある.また,心不全はAF患者における塞栓症の相対危険度を高めることが報告されている1).AFおよび心不全は,いずれも加齢とともに増加することが知られており,高齢化社会の進行に伴い,両疾患を合併した患者数の増加が予想される.このような背景を基に,近年,心不全合併AFにおける抗凝固療法の重要性が強く叫ばれるようになってきた.さらに,直接トロンビン阻害薬,第Ⅹa因子阻害薬に関する大規模臨床試験の結果が続々と発表され,抗凝固療法もワルファリン一辺倒の時代から,新規経口抗凝固薬を用いた新しい時代へと突入した.本稿では,新規経口抗凝固薬について薬理学的特徴と大規模臨床試験の成績を中心に解説する.Ⅱ古典的および新規経口抗凝固薬ワルファリンは,これまで半世紀以上にわたり,AFにおける脳塞栓症予防を目的とした抗凝固療法の中心的役割を担ってきた古典的経口抗凝固薬である.凝固カスケードにおいて,ビタミンK依存性凝固因子である第Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ因子を複合的に阻害することで抗凝固作用を示す.複数の凝固因子を同時に阻害するため,効果の変動もさまざまな因子により規定される.また,食事中のビタミンK含有量でその効果が大きく変動し,ワルファリンと相互作*1名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学病院助教*2名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学教授76Current Therapy 2013 Vol.31 No.4424