カレントテラピー 31-4 サンプル

カレントテラピー 31-4 サンプル page 25/30

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Key wordsNohria-Stevenson分類国立循環器病研究センター医療安全管理部長・心臓血管系集中治療科医長併任横山広行心不全の病態を把握するには,いくつかの分類方法がある.1970年代に提唱されたForrester分類は,容....

Key wordsNohria-Stevenson分類国立循環器病研究センター医療安全管理部長・心臓血管系集中治療科医長併任横山広行心不全の病態を把握するには,いくつかの分類方法がある.1970年代に提唱されたForrester分類は,容量負荷(肺動脈喫入圧)と左室収縮能(心拍出量)により,血行動態に基づいて病態を把握する分類で,治療方針の決定に有用である.しかし,右心カテーテルの利用頻度が激減したため,Forrester分類は血行動態の不安定な一部の限定した症例にしか使用されなくなった.一方,身体所見に基づくNohria -Stevenson分類は簡便であり,心不全の病態分類に広く活用され,日本循環器学会『急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)』,および欧州心臓病学会『急性・慢性心不全のガイドライン2012』で紹介されている.Nohria -Stevensonらは慢性心不全患者を対象に,身体所見に基づき,うっ血所見の有無,組織低灌流所見の有無により臨床病型を4群に分類した.左室充満圧上昇により肺うっ血や水分貯留があればwet,なければdry,また組織低灌流所見があればcold,なければwarmと定義した.うっ血を示す所見として,起座呼吸は左室充満圧上昇に対して最も感度,特異度が高い症状である.頸静脈怒張と夜間咳嗽も,起座呼吸と同様に左室充満圧の上昇を現す感度の高い症状である.下腿浮腫や湿性ラ音は感度,特異度ともに低く,慢性的に左室充満圧上昇を伴う症例でも出現しないことがあるため,奔馬調律(Ⅲ音聴取),腹水貯留,肝頸静脈逆流,冷汗を伴う喘鳴,ピンク色の泡沫状喀痰など,他の所見と合わせたwetの診断が必要である.一方,低心拍出量に基づく組織低灌流(cold)の所見には,脈圧の狭小化,四肢冷感,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に関連した血圧低下,血清Na値の低下,腎機能増悪,が挙げられる.なかには尿量減少,傾眠傾向,口唇や爪床のチアノーゼを伴うこともあるが,coldの存在を掌握するには,身体所見を的確に観察する必要がある.Nohria -Stevenson分類は慢性心不全症例を対象に作成された分類であるが,多くの場合は急性心不全症例にも適合する.しかし,急性心不全患者で末梢血管抵抗が急激に上昇し呼吸困難と苦痛が著明になる症例では,心機能低下による組織低灌流がない場合にも,著明な冷汗と四肢冷感を呈することがあり,四肢冷感は必ずしも心機能低下を反映しているとは限らない.国立循環器病研究センターに急性非代償性心不全で緊急入院した連続662例をNohria -Stevenson分類に当てはめ,症例割合と院内死亡率を分析した.その結果,warm&dryは2.6%(死亡率0%),warm&wetは72.6%(死亡率3.8%),cold&wetは24.6%(死亡率9.9%)であり,急性心不全の重症度を反映していた.Current Therapy 2013 Vol.31 No.443789