カレントテラピー 31-7 サンプル

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54 Current Therapy 2013 Vol.31 No.7720Ⅰ はじめにわが国の高血圧症の罹患者は約4,000万人であり,そのほとんどは本態性とされ原因が不明であった.しかし,この数年の研究により,これまで本態性高血圧症とされた6~10%は,原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)であることが明らかとなった1).そして,特筆すべきこととして筆者らの研究を含めた検討により,PAは本態性高血圧と比較し,心脳血管障害の合併が明らかに高率であることが明らかになった2).PAの病型として,欧米においては,副腎の両側性過形成によるいわゆる特発性アルドステロン症(idiopathic adrenal hyperplasia:IHA)が50~70%と最も多く,アルドステロン産生腺腫(aldosterone-producing adenoma:APA)は約30%である1).一方,本邦でのPAでは,APAが約70%でIHAが約30%と欧米の比率と逆転していることが特徴である3).また,その他に頻度は少ないが,家族性アルドステロン症(familial hyperaldosteronism:FH)Ⅰ型(グルココルチコイド奏効性アルドステロン症:glucocorticoid remediable aldosteronism:GRA),FH Ⅱ型,FH Ⅲ型がある4).これまでFH I型の原因は,CYP11B1 遺伝子とCYP11B2 遺伝子の相互転座と明らかであったが5),その他FH Ⅲ型やAPAの原因はまったく不明であった.しかし,2011年2月にChoiらのグループから,KCNJ5変異の病態生理学的意義中島康代*1・山田正信*2原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)の原因は,家族性Ⅰ型のCYP11B1遺伝子とCYP11B2 遺伝子の相互転座を除いて不明であったが,2011年にアルドステロン産生腺腫(aldosterone-producing adenoma:APA)のエクソーム解析によりカリウム(K) チャネルのKCNJ5(Kir 3.4, GIRK4)に体細胞変異を約35%に認めると報告された.この変異は機能獲得型の変異で強いホットスポットがあり,Kチャネルのフィルター部に異常を起こす.その結果,本来のKチャネルからナトリウム(Na)イオンが流入するようになり脱分極の後,電位依存性カルシウム(Ca)チャネルから持続的にCaイオンが流入し,アルドステロンの合成亢進と細胞増殖が起こることが示唆された.さらに,家族性アルドステロン症Ⅲ型の家系においてもKCNJ5胚細胞変異が同時に発見され,KCNJ5のPAにおける重要性が裏づけられた.興味深いことに,本邦のAPAにおいてはきわめて高率に同様の変異を認め,変異のある症例は若年発症で,重症のPAであることが明らかとなった.さらに最近,APAの約5%にATPaseの変異も報告され注目を集めている.*1 群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学*2 群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学教授原発性アルドステロン症―診断と治療の新展開