カレントテラピー 31-7 サンプル

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カレントテラピー 31-7 サンプル

Current Therapy 2013 Vol.31 No.7 55721APAの22名中8名(約35%)にカリウム(K)チャネルのKCNJ5(Kir 3.4, GIRK4)に体細胞変異を認め,さらにFH Ⅲ型の家系にも同じくKCNJ5に変異があることが報告された6). その後,PAにおけるKCNJ5変異に関して多くの検討がされ,その病態が少しずつ明らかとなりつつある.Ⅱ アルドステロンの分泌調節血圧や体液量の保持は主にレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系により制御される.ミネラルコルチコイドであるアルドステロンは副腎皮質の球状層で合成され,主に腎遠位尿細管のミネラルコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR)に作用してナトリウム再吸収やカリウムの分泌を行う.アルドステロンはコレステロールを基質としてアルドステロン合成酵素(CYP11B2)により合成される.コレステロールは血中のLDLもしくはHDLをそれぞれの受容体〔LDL受容体,HDL受容体の機能をもつスカベンジャー受容体B1(SR -B1)〕を介して副腎皮質細胞内に取り込み,StARの作用によりミトコンドリア内に取り込まれ,CYP11A1(コレステロール側鎖切断酵素)の作用によりプログネノロンを合成,その後,HSD3B2 によりプロゲステロン,さらにCYP21A2の作用を受けデヒドロコルチコステロン(dehydrocorticosterone:DOC)に生合成され,最終的には再度ミトコンドリア内でCYP11B2の作用によりアルドステロン合成が行われる7).CYP11B2は球状層に発現しているが,その遺伝子の転写はアンジオテンシンⅡ(Ang Ⅱ)と細胞外Kにより亢進する.Ang ⅡやK刺激により球状層細胞の脱分極を生じ,電位依存性Caチャネルの主にT型が開口し,細胞内にCa2+が流入,Ca2+濃度の増加をもたらす.一方で,Ang Ⅱはアンジオテンシン1受容体(AT1)にも作用し,放出されたイノシトール3リン酸(inositol triphosphate:IP3)が小胞体に作用し小胞体からのCa2+放出を促進させる.このようにして増加した細胞内Ca2+によりカルモジュリンや,カルモジュリンキナーゼが活性化して核内受容体であるNurr1やNGF1Bをリン酸化する. このリン酸化された転写因子によりCYP11B2 遺伝子発現が亢進する8).Ⅲ アルドステロン産生腺腫における変異KCNJ5の病態APAの原因としてかねてより,直列ポアドメインKチャネルであるTASKチャネルが注目されていた.TASKチャネルは球状層で強く発現し,TASK1ノックアウトマウスは雌においてのみ束状層で異所性のアルドステロン産生亢進を認め,GRAに類似の病態が報告された9).一方,TASK1/TASK3ダブルノックアウトマウスでは,副腎皮質の球状層や束状層の形態に異常はなく,アルドステロンの異所性発現も認められないが,高アルドステロン,低レニン血症を呈していた10).しかし,ヒトにおけるTASKチャネル遺伝子異常はこれまで認められていない.2011年にChoiらは,22例のAPAの腫瘍組織からDNAを抽出し, イルミナ社のHuman 1M - DuoDNA Analysis BeadChipを用いて,DNAコピー数とヘテロ接合性の喪失(loss of heterozygosity:LOH)の検索を行った.その結果,8症例のAPAにおいては多数のLOHを認めたが,14症例ではLOHが少数か全く認められなかった.続いてLOHを全く認めない4症例のAPAと末梢血からのDNAについて,APAの体細胞変異を検出するためエクソーム解析を行った.その結果いくつかの体細胞変異の候補遺伝子が認められたが,2症例のAPAにKCNJ5遺伝子の変異が共通していた.そこで,さらに残りの18症例についてKCNJ5 遺伝子変異を検索すると8例に変異を認めた6).KCNJ5はGタンパク質により制御される内向き整流K+チャネル(GIRK)であるKir 3.4サブユニットをコードする遺伝子である.Kir 3.4サブユニットは2つの細胞膜貫通領域と1つのKイオン感受性フィルターから構成され,ホモあるいはヘテロ4量体を形成し機能している.KCNJ5 遺伝子は,心臓や内分