カレントテラピー 31-7 サンプル

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78 Current Therapy 2013 Vol.31 No.7744清K値の変動は同等で,性ステロイド作用による副作用発現頻度はエプレレノンで明らかに低値であった.しかし,エプレレノンの薬価がスピロノラクトンに比べて4~5倍と高価であることから,海外では医療経済を考慮してPAに対する第一選択薬としてスピロノラクトンが用いられることが多い.Ⅲ カルシウム拮抗薬Ca拮抗薬はMR拮抗薬による血圧コントロールが不十分の場合や高K血症のためにMR拮抗薬の増量が困難な場合に併用する.PAではCa拮抗薬が血管拡張作用とともにアルドステロン分泌抑制を介して降圧やアルドステロンによる臓器障害抑制に有効であると考えられている.Ca2+は副腎球状層細胞においてT型,L型Caチャネルを介してアンジオテンシンⅡ,副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone:ACTH),高Kの刺激によるアルドステロン分泌を促進する.このためT型,L型Ca拮抗作用を有するCa拮抗薬によりCa2+流入を抑制するとアルドステロン分泌は抑制される.近年,副腎皮質細胞におけるN型Caチャネルの発現およびアルドステロン分泌への関与が報告され,L型,L/T型,L/N型Ca拮抗薬のいずれもアルドステロン分泌抑制作用が報告されている.しかし,Ca2+は傍糸球体細胞において主にL型Caチャネルを介してレニン分泌を抑制するため,L型Ca拮抗薬は同時にレニン分泌亢進およびアンジオテンシンⅡ合成促進をきたしアルドステロン分泌も刺激され,結果的に血中アルドステロン濃度はほとんど変化しない.一方,L/N型Ca拮抗薬では交感神経終末に存在するN型Caチャネルを抑制することにより,傍糸球体細胞からのレニンの産生分泌をも抑制するため,血中アルドステロン濃度の低下を期待できる6).PAではRA系が抑制されているため,Ca拮抗薬により血中アルドステロン濃度が低下する可能性がある.このため,PA診断のためのスクリーニング,機能確認検査を行う際にはジヒドロピリジン系Ca拮抗薬を中止することが推奨されている.PA治療におけるこれまでの検討はいずれも10例前後の少数例を対象としたものであるが,ニフェジピン20~40mg/日の投与で血漿レニン活性の変化を伴わずに血漿アルドステロン濃度と血圧が有意に低下したが低K血症の改善はみられないと報告されている7),8).さらにin vitro の検討では高用量のニフェジピンやニカルジピンなどのジヒドロピリジン系Ca拮抗薬がMR拮抗作用を示すことが報告されており,今後,非ステロイドMR拮抗薬としての開発が期待されている.Ⅳ レニン・アンジオテンシン系阻害薬レニン阻害薬およびアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬はアンジオテンシンⅡの産生阻害,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)はアンジオテンシンⅡの作用を受容体レベルで阻害することにより,アンジオテンシンⅡによる血管収縮,副腎皮質球状層からのアルドステロン分泌を抑制する.PAではRA系の構成要素であるレニン,ACE,アンジオテンシンⅡがすでに抑制されており,機能確認検査であるカプトプリル試験ではACE阻害薬によるレニン増加反応およびアルドステロン低下反応が欠如し,フロセミド立位試験でもレニン増加反応がみられない.このため降圧,低K血症是正に対するRA系阻害薬の効果は期待できない.加えて通常,副腎のアルドステロン合成はアンジオテンシンⅡにより促進されるが,PA,特にAPAでのアルドステロン合成は主にACTHによる調節を受けておりRA系刺激に反応しないためアンジオテンシンⅡ阻害の効果は低いと考えられる.しかし,IHAや一部のAPAでは4時間立位試験でアルドステロンの増加反応がみられ,アルドステロン合成がアンジオテンシンⅡ依存性の反応を示し,むしろ亢進している.このような症例ではRA系阻害薬の効果が期待され,短期的には6日間のカプトプリル75mg/日投与で軽度の血漿アルドステロン濃度の低下とともに約20%の降圧がみられ,その程度