カレントテラピー 31-7 サンプル

カレントテラピー 31-7 サンプル page 9/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 31-7 サンプル の電子ブックに掲載されている9ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 31-7 サンプル

12 Current Therapy 2013 Vol.31 No.76783 機能確認検査現在,機能確認検査として少なくとも6種類の検査が提唱されている.その多くはアルドステロン分泌の自律性を検証するものであるが,PAにおけるアルドステロン分泌の反応性増加を検証する迅速ACTH試験もあり,検査の原理は異なる.また,必要な検査の実施数と組み合わせ,優先度,具体的なカットオフも統一されていない.日本内分泌学会の診療ガイドラインでは二つ以上の陽性をPA診断の必須要件としているが,その客観的根拠には批判もある5).日常診療におけるPA診断の普及に対する課題のひとつが機能確認検査であることを考慮すると,できれば一種類の検査が望ましく,今後,実施の容易さ,感度,特異度の観点から,最も適切な検査の確立が期待される.著者ら6)は,まずカプトプリル試験を実施し,陽性の場合に適宜他の機能検査を追加している.また,ARR>1,000以上では機能確認検査を省略できることも報告している.4 局在診断法CTは多くの施設で実施可能であるが,腫瘍が確認できてもその機能評価はできない.また,PAの腺腫は小さいことから,約50%はCTで腫瘍を確認できない.このため,AVSが重要である.しかし,技術の熟練が必要な点,実施方法が標準化されていない点7)が課題で,近年,カテーテル挿入の成否の判断に有用とされるACTH負荷8)も,かえって不利益であるとの報告9)もある.局在診断の判定に用いる指標やそのカットオフも施設ごとで異なる.判定基準の不均一性は局在診断結果の不統一をもたらし,判定の境界域にある例では両側性か一側性かの診断が逆転する可能性も否定できない.さらに近年,サンプリングの実施件数は明らかに増加しているが,実施が必要とされる推計患者数にはるかに及ばない.今後,より普遍的に実施が可能な非侵襲的画像診断の開発が必要である.5 治療法の選択副腎腫瘍を有する典型的なPAでは,一側副腎摘出術が第一選択の標準的治療であることは異論がない.一方,CTで明らかな副腎腫瘍を認めないがAVSでのみ一側性が示唆された例の手術適応と術後の長期的予後は未確立である.また,局在診断が確定されない例では薬物治療が選択されるが,アルドステロン拮抗薬の併用が必須か,あるいは通常の降圧薬で十分かの確実なエビデンスもない.今後,介入研究による検証が必要である.Ⅵ おわりに日常,高血圧の診療に従事する医師は,基本的にガイドラインに準拠して診療を進める必要がある.しかしながら,ガイドラインには種々の課題が残されていることから,担当医は個々の患者ごとに実施する検査,および実施方法を適切に選択することが必要で,機械的にすべての検査を実施することがないように注意が必要である.一方,PAは頻度の高いcommon diseaseであることから,診断の各プロセスの簡素化と非侵襲化が必須である.特に,表2 PA診療の課題と対策STEP 現状課題対策1 スクリーニング対象・全高血圧か・PA高頻度群か・ コスト・ベネフィット(個人,国全体)未確立・ 対象患者の選択・検査費の低下指標・ARR>200のみ・ PAC↑・PRA↓などとの組み合わせ・感度,特異度未確立・普及の実態不明・具体的なカットオフ値未確立・指標とカットオフ値の標準化2 機能確認検査・数種類が提案・検査の数,組み合わせ・実施法・カットオフ値が未確立・ 実施検査とカットオフ値の標準化3 局在診断法・副腎CT・副腎シンチ・AVS・CTの感度・特異度が未確立・ サンプリングの普及度,成功率,実施法,判定法が未確立・ サンプリング適応の選択と実施法の標準化・非侵襲的診断法の開発4 治療法・手術・薬物治療・長期予後が未確立・微小腺腫の手術適応未確立・ 手術適応基準の標準化・非手術例の薬物治療の確立