カレントテラピー 32-2 サンプル

カレントテラピー 32-2 サンプル page 16/26

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 32-2 サンプル の電子ブックに掲載されている16ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 32-2 サンプル

Current Therapy 2014 Vol.32 No.2 45わが国の総合診療:歴史と現状145目標と内容について,将来いずれの診療科を専攻するものも,研修期間の前期のうちに関連する診療科を広くローテイトし,プライマリ・ケアの基本的知識技能を広く修得できるような研修計画を立てることが必要であるとした意見書が出された.さらに,53(1978)年3月には,プライマリ・ケア修得のための方策が出されている.また,医療関係者審議会臨床研修部会からは,60(1985)年3月に総合診療方式の研修目標が設定されている.このような時代背景を受けて,家庭医懇は発足している.Ⅲ 家庭医懇で何が議論されたか当時の厚生省は家庭医懇に臨むにあたり,検討の背景として現行医療の問題点を次のように整理している.①近年における疾病構造の変化等に伴い,日常からの健康管理はきわめて重要.②患者と医師の信頼関係が薄れてきている.③人間全体を対象とする医療となっていない.④患者の状態に応じ,最も適切な医療機関へ紹介し,またはフィードバックしてくれるシステムが確立していない.⑤医師の勤務医志向が強く,プライマリ・ケアの担い手が減少傾向にある.その他,特記すべきは8名のゲスト・スピーカーからの意見聴取が行われたことである.ここでは,この記録に基づいて家庭医懇の様子を窺い知ることができるとして,これらについて触れておきたい.日野原重明氏(当時 聖路加看護大学長)は「わが国におけるファースト・コンタクトについて」と題して,家庭医とその役割を述べたなかで,“家庭医”とは,各年代層にわたる患者とその家族を対象にして,その病気が何であっても,訴えが何であってもそれを個人的に取り上げて,継続的に,包括的ケアを与える責任をもっている医師である.永井淳一郎氏(ライフ・ケア・システム幹事・非医師)は,白十字診療所の話を中心に述べ,開業医には本当の意味での相談がなかなかできない.非常に忙しく機械的に診察をして,すぐに大量の薬を渡してしまうということで,人間的な深みのある相談というのは実際のところやれない状態ではなかろうかと思うと.前沢政次氏(当時 自治医科大学地域医療学助教授)は「家庭医療の実践・教育とその評価」と題して,なぜ今「家庭医療(Family Practice)か?」として,自治医科大学における家庭医療の実践についての報告,および家庭医療の学生教育と評価とについて述べている.今後の展開では,community -basedの臨床研修施設の設置や家庭医療学の学問体系化の必要があると.筆者(当時 厚生省病院管理研究所)は,「地域と家庭医」と題して,臨床研修医養成における家庭医志向の研修の必要性を述べ,家庭医とは全人的に問題解決をして,病気ではなく病人を診ることのできる医師であるとし,外来診療を重視し,一般国民から見てわかる制度をつくるべきだと主張している.松石久義氏(当時 日本医師会常任理事)は「家庭医機能について」と題して,前年の昭和60年厚生省省議での予算案概算要求案のなかに,「家庭医制度創設準備費」が予算項目に入れられているとし,この“家庭医”という言葉が医師会にとって非常に刺激的であったと.その理由は,『健康保険』(昭和58年5号)に,“医療機関の類型,種別に対応した診療報酬”と記載されており,その類型のなかにホーム・ドクター(コンサルタント・ドクター)とあり,各方面からホーム・ドクター(家庭医)システムの普及が求められている等々.この記事から読み取れることは,件数払いによる医療費を支払う形の家庭医制度,医療費の削減を最大の目的とした制度導入であり,反対したという.なお,60年3月の日本医師会医療システム研究委員会答申「家庭医について」10)を併せて提出している.阿部正和氏(当時 東京慈恵会医科大学学長)は,「私の家庭医論」と題し,開業医に希望するとして,サイエンスとしての医学に支えられ,アートとしての医を主軸にした家庭医機能についての再教育を受けるようにと.今のところ家庭医の制度化には積極的に賛成ではないとして,次の4つの条件を備えたものを家庭医であるとした.①病人およびその家族の病気,または健康問題に気軽に,継続的に,総合