カレントテラピー 32-4 サンプル

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8 Current Therapy 2014 Vol.32 No.4324Ⅰ はじめに糖尿病ではβ細胞量の減少が特徴的であり,そこにβ細胞の再生や分化能が関わっている.したがって,β細胞の発達,再生機構を明らかにすることは糖尿病治療に直結する.これまで,β細胞の動態については動物モデルでの研究が主であり,ヒトではあまり知られていない.特にヒトβ細胞での動態を明確にすることは糖尿病の治療を考慮するうえで不可欠である.本稿では,最近明らかになりつつある,ヒトでのβ細胞の成長,加齢に伴う変化,再生への影響について紹介するとともに,動物でのデータを交えてその意義について論じる.Ⅱ ヒトβ細胞の発生と分化1 膵内分泌細胞の発生膵ランゲルハンス島(以下膵島)は妊娠12週からその形成が始まる.妊娠13~16週では導管から膨出した内分泌細胞の小集塊が膵島を構成する(図1).この時点では膵の約4%を占めている.妊娠17~20週となると導管との連続性が失われ,孤在性となり,β細胞の周りを非β細胞が取り囲む膵島(外套膵島mantle islets)が主体となる.妊娠21~26週では非β細胞が膵島中心部まで拡大し,成人でみるような膵島構成細胞分布をとる.この時点では膵島は膵の8%から次第に13%まで増加する.膵島平均径もおよそ30μm~100μmまで上昇する.胎生期のβ細胞は膵の約1.2%を占めるが,膵島外のβ細胞の割合も増加する.全体として膵全体の1~2%となる1).ヒト膵β細胞の動態─特に成長,加齢との関連について─八木橋操六*2型糖尿病の病態はインスリン分泌低下とインスリンの作用不足によって代表される.インスリン分泌低下の背景に分泌機構の障害とともにβ細胞量自体の減少がある.β細胞量の減少には,細胞死と再生の不均衡があり,その回復はインクレチンを代表とする新しい糖尿病治療の標的ともなっている.これまでβ細胞の動態についてはげっ歯類など動物モデルからの情報が主であったが,最近のヒト剖検膵を用いた研究からヒトβ細胞の発生,分化,成長,加齢の過程が明らかにされつつある.β細胞の肥満や加齢での変化について欧米人と日本人に差があることがわかってきた.さらに,成人β細胞の再生能は低いものの,妊娠や胃切除などでβ細胞の過形成がみられ,その機序も明らかとなりつつある.このようなβ細胞の可塑性を明らかにすることにより,今後の新しい糖尿病治療の開拓も期待されている.* 弘前大学大学院医学研究科分子病態病理学教授DPP-4阻害薬登場後の糖尿病治療の変化