カレントテラピー 32-6 サンプル

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50 Current Therapy 2014 Vol.32 No.6556Ⅰ はじめにうつ病治療の際に不眠,眠気,昼夜逆転などさまざまな睡眠問題の対処に難渋することがしばしばある.特に慢性不眠はその頻度の高さ,重症度,治療困難度,生活の質(QOL)へ及ぼす影響の大きさなどから最も懸念される睡眠問題のひとつである.その詳細は後述するとして,うつ病の治療経過中に遭遇する代表的な不眠問題について図1に模式的にまとめた.これはうつ病と睡眠障害の大家であるKupferが示した経過図 1)を基に筆者が作成したものである.本稿では図1に挙げたテーマに沿ってうつ病診療においてどのような点に留意して睡眠問題に対処すべきか概説する.Ⅱ 鑑別診断うつ病患者の不眠には,うつ病性不眠のみならず,併存症として独立した慢性不眠症,睡眠時無呼吸症候群,薬剤起因性睡眠障害など多岐にわたり治療法も異なる(図2).うつ病患者が不眠や過眠を訴えると“精神症状のひとつ”と考えがちだが,一般人口での疫学調査の結果から推定して,過半数はその他の原因で生じていると考えたほうがよい.紙幅の関係から鑑別法および対処法は本稿では割愛する.ちなみに,厚生労働科学研究班の調査では,うつ病入院患者の約20%が睡眠時無呼吸に罹患していることが明らかになっている2).また,うつ病期間中にトラウマティックな体験とともに不眠が遷延すると,不眠に対する予期不安が高まりうつ病寛解後も神経症うつ病診療で遭遇する睡眠問題とその対処三島和夫*うつ病(気分障害,大うつ病)の診断項目のひとつに不眠が挙げられている.不眠がうつ症状のひとつに過ぎないとすれば,うつ病の発症とともに出現し,寛解や治癒とともに消失するはずである.しかし,現実は異なる.慢性不眠はしばしばうつ病に先行し,その多くは難治性であり,うつ病の寛解後も高率に残遺する.うつ病の臨床経過のなかで寛解と再燃に伴う抗うつ薬の増減はあれども,睡眠薬は寛解時にも減量できずに年余にわたり服用を続けるケースはまれではない.うつ病患者で高頻度にみられる慢性不眠は単なるうつ症状のひとつではなく,うつ病の臨床経過と乖離して持続する実にやっかいな併存症であることが臨床的にも病態生理学的にも明らかになっている.また,うつ病患者の不眠には,うつ病に起因するもの,併存症としての不眠症のみならず,睡眠時無呼吸症候群,レストレスレッグス症候群,薬剤起因性睡眠障害など多岐にわたりそれぞれ治療法も異なる.うつ病診療の際に不眠問題にどのように対処すべきか最近の考え方を紹介する.* 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長うつ病診療―入り口から出口まで