カレントテラピー 32-6 サンプル

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52 Current Therapy 2014 Vol.32 No.6558病寛解後も遷延して慢性不眠症となりうつ病の再発リスクを高めていることが繰り返し指摘されてきた.2011年に発表された過去の17研究のメタ分析によれば不眠はうつ病の発症リスクを2~3倍,平均で2.1倍有意に上昇させることが明らかになっている15).また,治療抵抗性のうつ病では不眠が強い7),16),自殺のリスクを高める17)ことも指摘されている.Ⅵ 不眠はうつ病の前駆症状である多くのうつ病患者では不眠がうつ病の発症に先駆けて出現することが知られており,不眠はうつ病が発症する際に最も初期に出現する非常に重要な臨床指標である.うつ病の臨床経過を調査したある研究によれば,主観的な不眠症状がうつ病発症の平均5週間前から出現したという18).初発うつ病患者の約4割,再発うつ病患者の約6割において,抑うつ気分や意欲減退などの中核的なうつ症状に先駆けて不眠が出現するとされる19).うつ病患者はともすれば病識(自分が精神疾患に罹患しているという認識)に乏しく,医療機関へのコンサルトが遅れがちである.長引く不眠に留意することは,うつ病患者の受療を促し医療者側も再発を早期発見するための有効なサロゲートのひとつとなる.Ⅶ うつ病では不眠が残遺する抗うつ薬の服用により患者の1/3は寛解に至るが,1 / 3は部分寛解にとどまり,1 / 3は抗うつ薬に反応しない20).軽度の残遺症状があるだけでも対人・対社会関係が大きく障害され,臨床経過中の公的補助の受給,精神科入院,希死念慮や自殺企図のリスクが高まるとされる.残遺症状のあるうつ病患者の再発頻度はない患者に比較して有意に高い20),21).特にうつ病患者の残遺症状のなかでは不眠は最も頻度が高く重症化しやすいと言われている3)~7).図3に筆者らが初発の大うつ病患者128名を対象として調査した残遺不眠の頻度を示す7).病相期(初発時を含む)では平均で90 . 9%の患者が不眠を経験していたのに対して,寛解期においても71. 4%の患者で残遺不眠がみられた.また,平均で病相期間の81. 2%で不眠がみられたのに対して,寛解期間の37 . 2%で残遺不眠がみられた.寛解期の残遺不眠の頻度,期間ともに再発を繰り返すたびに増加しており,結果的に睡眠薬の平均服用量は再発のたびに増加していた7).Ⅷ 不眠症とうつ病の病態生理学的リンケージ不眠症がうつ病に高率に併存し,残遺し,さらには発症リスクを高める背景として,両疾患が相互に近難治性残遺不眠残遺過眠精神生理性不眠症(慢性不眠)睡眠の加齢変化睡眠衛生の悪化(運動不足)うつ病に併存する睡眠障害精神症状としての不眠・過眠睡眠時無呼吸症候群周期性四肢運動障害レストレスレッグス症候群薬剤性・身体因性の不眠・過眠睡眠・覚醒リズム障害(夜型・昼夜逆転)長期入院患者の高齢化社会接触の減弱患者の高齢化薬物相互作用神経症化慢性化肥満筋弛緩生活習慣病SSRISNRI誘発性図2うつ病に併存する睡眠障害〔参考文献2)より引用〕