カレントテラピー 32-6 サンプル

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54 Current Therapy 2014 Vol.32 No.6560避けるべきであるとの主張がある.その論拠として,鎮静系薬剤・睡眠薬を併用することは持ち越し効果や依存形成などの副作用のため服薬コンプライアンスを低下させる危惧を挙げる.また,うつ病が改善すれば随伴する不眠や日中の眠気も平行して消失するであろうという期待から,うつ病が持続している間は睡眠障害に対する積極的な治療は無用であるとの意見さえ聞かれる.しかしながら,これらは医学的根拠に乏しい不合理な主張であることはすでに述べた.現在では睡眠薬の使用に際して,薬動態を十分にコントロールした投与設計が可能であり,非ベンゾジアゼピン系睡眠薬やメラトニン受容体作動薬など新規に開発された睡眠薬の認容性は十分高い.近年では,うつ病の急性期においてはむしろ積極的に不眠を治療することが臨床転帰を改善するという考え方を指示するエビデンスが増加している.例えば,非ベンゾジアゼピン系睡眠薬であるエスゾピクロンをSSRIと併用することの有用性を検証した大規模な偽薬対照無作為化比較試験が行われた11).この試験では大うつ病の治療初期からエスゾピクロンをSSRIに併用することにより,SSRI単剤使用時よりも急速かつ有意に優れた抑うつ症状の改善が得られることを示したほか,少なくとも投与10週間目までは認容性に関しても問題がないことを明らかにした.また,うつ病患者を催眠鎮静作用の強いミルタザピンにより4週間治療したところ,うつ症状の改善や睡眠の質の向上と同時にHPA軸機能の過活動も正常化したという知見は残遺不眠のリスク低減や再発予防効果を期待させる所見である29).? うつ病に合併する日中の眠気とその治療日中の眠気もまたうつ病患者で認められる頻度の高い症状のひとつである6).うつ病患者の眠気は,睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群などさまざまな睡眠障害が合併した結果として生じている可能性を考慮すべきである.最近では,うつ病患者,特にSSRI 服用中の患者の日中の眠気や疲労感の改善にモダフィニルが有効であるという報告もある30)~33).ただし,本邦ではモダフィニルはナルコレプシーや睡眠時無呼吸症候群の過眠症状に対してのみ保険が適用されている.? おわりにうつ病患者の多くがさまざまな睡眠障害を合併する.特に慢性不眠は難治性であり,寛解期での残遺率も高率である.不眠や過眠が患者のQOLや長期予後に甚大な影響を及ぼしていることを考えると,うつ病診療の際に睡眠障害の正しい診断と治療選択を行うことの意義は大きい.たかが不眠と看過せず,適切な対処が求められる.分類一般名商品名催眠・鎮静作用(α1, H1, 5-HT2遮断)覚醒作用(5-HT2刺激)三環系AmitriptylineClomipramineImipramineTrimipramineAmoxapineトリプタノール?アナフラニール?トフラニール?スルモンチール?アモキサン?+++++++++++++++++++四環系TrazodoneMianserinMaprotilineレスリン?テトラミド?ルジオミール?++++++---SSRI FluvoxamineParoxetineSertralineルボックス?パキシル?ジェイゾロフト?+/---+++++SNRI Milnacipran トレドミン? ++NaSSA Mirtazapine レメロン? ++ -表抗うつ薬の薬理作用生物学的精神医学会世界連合WFSBPによる単極性うつ病性障害の生物学的治療ガイドライン等のデータを参照