カレントテラピー 32-6 サンプル

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66 Current Therapy 2014 Vol.32 No.6572Ⅰ はじめにうつ病の治療には,抗うつ薬による薬物療法,認知行動療法,電気けいれん療法などの抗うつ療法がある.欧米では,これらの抗うつ療法に加え,経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)が認可されている.TMSは,非侵襲的に大脳皮質を刺激し皮質や皮質下の機能を変化させる方法であり1),規則的な刺激を連続して行うものを反復経頭蓋磁気刺激(repetitive TMS:rTMS)という2).TMSは,うつ病のみならず,脳梗塞,パーキンソン病,ジストニア,耳鳴,神経原性疼痛,てんかん,筋萎縮性側索硬化症,統合失調症,依存症,強迫性障害,Tourette’s 症候群,記銘力障害などの疾患に試みられている1).従来は,神経生理学的な研究のツールとして利用されてきたが,1993 年に初めて薬剤抵抗性うつ病の治療に応用され,その抗うつ効果が検証されるようになった.当初,刺激条件が十分ではなく,その有効性が示されないこともあった.しかし,刺激装置の技術革新に伴う刺激条件の向上により,2000年後半以降,複数の二重盲検ランダム化試験によって,rTMSの有効性が実証された3)~5).2008年には,米国食品医薬品局(Foodand Drug Administration:FDA)がNeuronetics社のrTMSを条件付きながらうつ病の治療器として認可した.わが国でも,既存の抗うつ薬による薬物療法に反応を示さないうつ病への新規治療法として注目され,うつ病患者や患者家族から,1日でも早い臨床現場への導入が期待されている.現在わが国では,Magventure社(デンマーク),Magstim社(英国),Neuronetics社(米国),Brainsway社(イスラエル)のrTMSがうつ病の治療器として認可を目指している.経頭蓋磁気刺激療法─治療器としてのわが国への導入を目指して─鬼頭伸輔*うつ病の治療には,薬物療法,認知行動療法,電気けいれん療法などの抗うつ療法があり,欧米では,経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)が認可されている.2008年に米国で反復経頭蓋磁気刺激(repetitive TMS:rTMS)がうつ病の治療器として認可されてから,わが国でも,新規抗うつ療法として注目され,臨床現場への早期導入が期待されている.現在,わが国では,計4社のrTMSがうつ病の治療器として認可を目指している.海外臨床試験の外挿によるものや,先進医療,もしくは医師主導治験が検討されているものもある.rTMSは安全性と低侵襲性に優れた抗うつ療法である.一方,その有効性については,現在の刺激条件や刺激方法が最適とは言えず,改善の余地が残されている.より抗うつ効果を高めるための研究も行われており,今後,新規抗うつ療法として確立し,普及することを期待する.* 杏林大学医学部精神神経科学教室講師うつ病診療―入り口から出口まで