カレントテラピー 32-6 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.6 69新しい治療法575の刺激を行う.4秒間の刺激で40回の刺激を与えるため,1日に75セッションを繰り返し3,000回の刺激となる.したがって,4秒間の刺激を26秒間隔で行うため,75セッション行うには1日に37分30秒かかる.治療期間も週5日,6週間にも及ぶため,患者や施術者の負担も少なくはない.有効性についても,電気けいれん療法の寛解率が65~75%であり15),非盲検下でのrTMSの寛解率が30~40%であることから10),今後もrTMSの抗うつ効果を高めるための刺激条件の工夫が必要であろう.うつ病の治療ではrTMSの刺激部位として,ながらく,左右の背外側前頭前野が選択されてきた.ほかの候補としては,背内側前頭前野,腹外側前頭前野,腹内側前頭前野,前頭極などが,うつ病の病態と関連しており,rTMSの刺激部位として検討されている15).従来の8の字コイルでは,頭表から約2cmの深度までしか刺激できなかったが,最近では,約5cmまで刺激可能なコイルが開発されている.また,通常の高頻度刺激や低頻度刺激だけではなく,thetaburst stimulation(TBS)16)やquadripulse stimulation(QPS)17)などの刺激方法は,patterned rTMSと呼ばれ,より効率的に大脳皮質の興奮性を変化させる可能性が報告されている.例えば,continuousTBS(cTBS)は,大脳皮質の興奮性を抑制し,intermittentTBS(iTBS)は大脳皮質の興奮性を増強させることから,cTBSにてうつ病患者の右前頭前野を刺激し,iTBSにて左前頭前野を刺激することでも,うつ病を改善させることができるかもしれない18).また,最近の神経画像研究は,うつ病患者では神経ネットワークの異常が認められることを報告している19).著者らは,治療抵抗性うつ病患者を対象にrTMSを行い,高密度脳波計を用いて機能的結合性の変化を調べ,左前頭前野への高頻度刺激がうつ病患者の機能的結合性が変化させること,fronto -parietalネットワークが関与していることを明らかにした20).このようにrTMSがうつ病患者の機能的結合性を変化させることから,神経ネットワークを治療標的とすることもできるかもしれない.Ⅴ おわりにうつ病を対象とした臨床研究は,国内でも小規模ながら行われている.わが国への導入に際して,先進医療,医師主導治験などのプロセスを経て,その有効性や安全性を評価することが必要である.rTMSは安全性と低侵襲性に優れた抗うつ療法である.一方,その有効性については,現在の刺激条件や刺激方法が最適とは言えず,改善の余地が残されている.刺激条件や刺激部位,刺激方法など,より抗うつ効果を高めるための研究も行われており,今後,新規抗うつ療法として確立し,普及することを期待する.参考文献1) Ridding MC, Rothwell JC:Is there a future for therapeuticuse of transcranial magnetic stimulation? Nat Rev Neurosci8:559-567, 20072) Rossi S, Hallett M, Rossini PM, et al;Safety of TMS ConsensusGroup:Safety, ethical considerations, and applicationguidelines for the use of transcranial magnetic stimulation inclinical practice and research. Clin Neurophysiol 120:2008-2039, 20093) O’Reardon JP, Solvason HB, Janicak PG, et al:Efficacy andsafety of transcranial magnetic stimulation in the acute treatmentof major depression:a multisite randomized controlledtrial. Biol Psychiatry 62:1208-1216, 20074) George MS, Lisanby SH, Avery D, et al:Daily left prefrontaltranscranial magnetic stimulation therapy for major depressivedisorder:a sham-controlled randomized trial. Arch GenPsychiatry 67:507-516, 20105) Slotema CW, Blom JD, Hoek HW, et al:Should we expandthe toolbox of psychiatric treatment methods to includeRepetitive Transcranial Magnetic Stimulation(rTMS)? Ameta-analysis of the efficacy of rTMS in psychiatric disorders.J Clin Psychiatry 71:873-884, 20106) 松本英之,宇川義一;臨床神経生理学会脳刺激の安全性に関する委員会:磁気刺激法の安全性に関するガイドライン.臨床神経生理学 39:34-45, 20117) Fitzgerald PB, Fountain S, Daskalakis ZJ:A comprehensivereview of the effects of rTMS on motor cortical excitabilityand inhibition. Clin Neurophysiol 117:2584-2596, 20068) Drevets WC, Price JL, Furey ML:Brain structural and functionalabnormalities in mood disorders:implications for neurocircuitrymodels of depression. Brain Struct Funct 213:93-118, 20089) Fitzgerald PB, Oxley TJ, Laird AR, et al:An analysis offunctional neuroimaging studies of dorsolateral prefrontalcortical activity in depression. Psychiatry Res 148:33-45,200610) George MS, Taylor JJ, Short EB:The expanding evidencebase for rTMS treatment of depression. Curr Opin Psychia