カレントテラピー 32-6 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.6 73治療薬解説579SSRIのユニークな点である.SSRIの副作用は,治療初期の吐気,嘔吐のほか,眠気,性機能障害,中止後症候群,まれに抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(syndrome of inappropiratesecretion of antidiuretic hormone:SIADH)などがある.しかし,従来の三環系抗うつ薬と比べると,SSRIでは抗コリン作用,抗α1アドレナリン作用,抗ヒスタミン作用による口渇,便秘,排尿困難,物忘れ,起立性低血圧,転倒,眠気などの副作用が大幅に軽減された(表4).SSRIは非常に服用しやすい抗うつ薬であり,1999年以降のSSRIの登場は本邦精神科臨床には重要かつ治療の進歩に貢献する出来事であった.性機能障害は高頻度であるが,うつ病では性欲が低下していることが多いため初期には目立たない.しかし,症状が改善したうつ病患者あるいは性欲減退のない不安障害患者では性機能障害の副作用は苦痛となる.中止後症候群も頻度が高く,比較的短期間服用後に急にSSRIを中断すると,全身倦怠感,頭痛,船酔いのようなめまい,電気ショック様感覚が出現し,非常につらい状態となる.患者によっては,中止後症候群は1回の飲み忘れでも起こり,服薬後24時間後でも起こり得るため,飲み忘れのないように患者に対する説明,服薬指導を徹底することが必要である.中止後症候群は一過性のうつ病症状悪化と間違う場合もあり得る.いうまでもなく,SSRIの再開により速やかに中止後症候群は消失するし,1日1回服用の場合で服用の翌日に軽度の中止後症候群が出現する場合には2?3回に分割服用することにより症状は改善する.Ⅲ SNRI1 薬理作用SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害作用のみをほぼ有し,細胞外セロトニン濃度のみならず,脳内で細胞外ノルアドレナリンとドパミン(ただし前頭葉でのみ)濃度を増加させる(表1).本邦ではミルナシプランとデュロキセチンの2種類がSNRIに分類される.デュロキセチンは,非常に弱いドパミン再取り込み阻害作用も有し,動物実験では側坐核で軽度の細胞外ドパミン濃度増加作用を示す6).ドパミン再取り込み阻害作用を有さないミルナシプランもデュロキセチンと同様に前頭葉で細胞外ドパミン濃度を増加させる1),2).その作用機序としては,以下の2つの機序が考えられる.①ノルアドレナリン作動性神経からノルアドレナリンがシナプス間隙に放出されるときに,前駆物質であるドパミンも一緒に放出される,②ノルアドレナリン作動性神経とドパミン作動性神経(側坐核,線条体以外では前頭前野に投射している)から放出されるドパミンはドパミン・トランスポーターのみならず,ノルアドレナリン・トランスポーターからも神経細胞内に再取り込みされるため,ノルアドレナリン再取り込み阻害薬与薬によりドパミンのノルアドレナリン・トランスポーターへの取り込みが阻害される2).以上の2つの機序に加えて,前頭前野ではドパミン作動性神経に比べて,ノルアドレナリン作動性神経の神経終末が比較的多いという解剖学的特徴が寄与して,ノルアドレナリン再取り込み阻害薬与薬により前頭前野一般名商品名効能・効果フルボキサミンルボックス?,デプロメール? うつ病・うつ状態,強迫性障害,社会不安障害パロキセチンパキシル? うつ病・うつ状態,パニック障害,強迫性障害,社会不安障害,外傷後ストレス障害セルトラリンジェイゾロフト? うつ病・うつ状態,パニック障害エスシタロプラムレクサプロ? うつ病・うつ状態ミルナシプラントレドミン? うつ病・うつ状態デュロキセチンサインバルタ? うつ病・うつ状態,糖尿病性神経障害に伴う疼痛ミルタザピンリフレックス?,レメロン? うつ病・うつ状態表3各種抗うつ薬の保険適応