カレントテラピー 32-6 サンプル

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74 Current Therapy 2014 Vol.32 No.6580細胞外ドパミン濃度が増加すると考えられる.2 臨床効果・副作用SNRIは精神科領域ではうつ病・うつ状態に対する効能のみを有する.デュロキセチンは糖尿病性神経障害に伴う疼痛にも効能を有する(表3).副作用としてはSSRIと同様に,治療初期の吐気,嘔吐のほか,眠気,性機能障害,中止後症候群,まれにSIADHなどがある.中止後症候群が起こりうるため,飲み忘れのないように患者に対する説明,服薬指導の徹底が必要である.その他,末梢のα1アドレナリン受容体を刺激するため,前立腺肥大のある患者では排尿困難を引き起こす.しかし,従来の三環系抗うつ薬と比べると,SNRIでは抗コリン作用,抗α1アドレナリン作用,抗ヒスタミン作用による口渇,便秘,物忘れ,起立性低血圧,転倒,眠気などの副作用は大幅に軽減され,SSRIと同様にSNRIも非常に服用しやすい抗うつ薬である(表4).Ⅳ NaSSA(ミルタザピン)1 薬理作用NaSSAとよばれるミルタザピンは抗α2アドレナリン作用と抗セロトニン2C作用を有し,脳内でノルアドレナリンとドパミンの細胞外濃度を増加させる.ミルタザピンはSSRIやSNRIとは異なり,ノルアドレナリンやセロトニンの再取り込み阻害作用は有さない(表1).抗α2アドレナリン作用その他の作用を介して細胞外セロトニン濃度も増加させるという報告もあるが,増加させないという報告もあり,いまだ結論は得られていない2),7),8).α2アドレナリン受容体はノルアドレナリン作動性神経の神経終末のみならず,ドパミンやセロトニン作動性神経の神経終末(異種受容体)にも存在し,α2アドレナリン受容体遮断がそれぞれの神経の発火・神経伝達物質放出を促す.その他,ミルタザピンは強い抗ヒスタミン作用を有する(表1).ミルタザピンと類似した化学構造をもつ四環系抗うつ薬のミアンセリンもミルタザピンと同様の作用を有するが,さらにノルアドレナリン再取り込み阻害作用と抗α1アドレナリン作用を有する点がミルタザピンと異なる点である7).ノルアドレナリン再取り込み阻害作用は抗うつ作用と関連するが,抗α1アドレナリン作用は起立性低血圧と細胞外セロトニン濃度低下作用を惹起するため,副作用と効果面で有害な作用をもたらす.ミルタザピンとSNRIであるミルナシプランとの併用は細胞外のノルアドレナリン,セロトニン,ドパミンの濃度を相加的,あるいは相乗的に増加させる8).この作用は臨床的に両者の併用療法が有効である可能性を示唆している.2 臨床効果・副作用ミルタザピンはうつ病・うつ状態に対する効能のみを有する.副作用としては抗ヒスタミン作用による眠気,抗セロトニン2C作用による食欲亢進,肥満がみられる(表1,4).抗セロトニン2A, 2C作用は深睡眠を増やす作用がある(表4).In vitro の薬理作用は副作用の機序を理解し,予測するのに有用である(表1,4).Ⅴ SSRI, SNRI, NaSSAの使い分けSSRI,SNRI,NaSSAのいずれも抗コリン作用をほとんど有さないため認知機能への悪影響は少なく,三表4 各種受容体阻害作用に関連する効果,副作用受容体阻害効果,副作用ヒスタミンH1受容体中枢性抑制薬の作用増強鎮静,眠気,体重増加,低血圧ムスカリン性アセチルコリン受容体かすみ眼,口渇,洞性頻脈便秘,排尿障害,記憶障害α1受容体降圧薬prazosinの作用増強起立性低血圧,めまい,頻脈α2受容体降圧薬clonidineおよびα-methyldopaの作用減弱抗うつ作用5-HT2C受容体抗不安作用,食欲亢進,体重増加,深睡眠増加5-HT2A受容体深睡眠増加5-HT3受容体嘔気抑制?ドパミンD2受容体錐体外路性反応,乳汁分泌〔参考文献1)より引用〕