カレントテラピー 32-6 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.6 7513うつ病診療― 入り口から出口まで―企画独立行政法人国立精神・神経医療研究センター総長樋口輝彦過去10年を振り返ってみると,うつ病に関する一般への啓発はかなり進んだと思われる.また,この10年間でうつ病で受診する人の数が倍増し,年間100万人を超えるに至ったことの背景には,純粋にうつ病が増加しただけでなく,啓発が進んだ結果受診する患者が増えたことも関係しているであろう.うつ病はその多くが,はじめから精神科医を受診することは少なく,かかりつけ医や身体科を受診してその可能性を指摘され,あるいは身体的に問題ないと言われて初めて精神科に受診する場合が圧倒的に多い.諸外国ではうつ病はgeneral practitioner(GP)が教育を受けており,自ら診断・治療にあたり,難治例のみが精神科の専門医に紹介されるシステムをもっている場合が多い.わが国においても,うつ病受療者数が増加するなかでかかりつけ医の果たす役割が期待され,少しずつではあるが一般科医がうつ病医療にかかわる状況も生まれている.うつ病の医療もこの10年間で大きく変化してきている.かつてはうつ病の概念がきわめて狭く(DSMでメランコリー型にほぼ相当),治療法も休養と薬物治療が主体であったが,最近ではこれに加えて認知行動療法が有用であることが示され,治療法として日常臨床に組み入れられはじめている.一方,抗うつ薬の開発自体は世界的に行き詰まりを見せ,新規薬剤の開発は進まなくなっているが,最近の傾向は,抗うつ薬そのものの開発から抗うつ薬治療増強作用のある薬の開発に関心が集まってきている.また,うつ病から回復して職場復帰する際の復帰プログラムの開発(リワークプログラム)が行われ,三次予防(再発予防)を含むアプローチが積極的に行われるようになってきたことも,この10年間の変化のひとつである.本特集では,以上に述べたようなうつ病医療の変化を踏まえて,従来の診断・治療という狭い枠組みを広げて「入り口から出口」と題して幅広くうつ病医療の最近の話題を取り上げることにした.入り口としては,ややもするとメディアに煽られて「新型うつ病」が独り歩きしているなかで,専門集団としての共通理解が重要との認識のもと,うつ病概念の整理を取り上げた.出口としては,うつ病からの社会復帰,職場復帰をテーマとしてリワークプログラムに焦点を当てた.また,「薬物療法から認知行動療法まで」「産後うつ病と高齢者のうつ病」「認知症とうつ病の関係」「双極性障害と統合失調症の関係」などできるだけ幅広くうつ病医療に関するトピックスを取り上げた.その狙いは,本特集が精神科専門医だけでなく,広く一般科の医師にも読まれることを想定したからである.本特集が多くの医師の日常臨床に役立てられることを願ってやまない.エディトリアル