カレントテラピー 32-7 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.7 49665する.ST上昇がみられなくとも,血液マーカーなどの他覚的検査所見に陽性所見がみられるACSも比較的容易に診断し得るが,病歴以外に陽性所見がみられない症例をいかに正確かつ迅速に診断するかということがACSの診断においては重要となる.このような不安定狭心症は病歴のみに診断根拠を委ねることになり,詳細かつ的確な病歴聴取を短時間で行うことがきわめて重要である.自覚症状の性状,出現様式,持続時間,リスク因子,家族歴など総合的に判断し,非典型的と思われる症状でも安易に不安定狭心症の可能性を否定しないことが見逃さない非常に重要なポイントである.ガイドラインに示された初期の評価項目を表1 4)に示すが,これらを参考に系統的に短時間で評価を行い,たとえ初診時に安定していたとしても病態変化を見逃さないために時間をおいて繰り返し評価を行うことも忘れてはならない.ST上昇型急性心筋梗塞については,診断は容易ではあるが迅速さが要求され,病院到着から10分以内にバイタルサインのチェック,連続心電図モニター,病歴聴取,標準12誘導心電図,臨床検査を行うとともに初期治療も並行して開始し,できるだけ早期の再灌流治療へつなげなければならない.初期対応時に施行すべき諸検査を以下に示す.1 標準12誘導心電図First medical contactから10分以内の心電図の評価がガイドライン4)で推奨されており,来院後直ちに心電図検査をするべきである.ACSの心電図判読でまず絶対に見逃してはならないのはST上昇である.隣接する2誘導以上のST上昇がみられたらST上昇型急性心筋梗塞と診断する.その場合,解剖学的に反対側の誘導でのST低下(reciprocal change)を探す.逆にST低下が目立つ心電図では,他の誘導表1 初期評価項目のチェックリスト問診簡潔かつ的確な病歴聴取胸部症状,関連する徴候と症状,冠危険因子,急性大動脈解離・急性肺血栓塞栓症の可能性,出血リスク,脳血管障害・狭心症・心筋梗塞・冠血行再建の既往身体所見バイタルサイン(大動脈解離を疑う場合は四肢の血圧も)聴診心音,心雑音,呼吸音(湿性ラ音の有無とその聴取範囲),心膜摩擦音,血管雑音(頸動脈,腹部大動脈,大腿動脈)眼瞼所見貧血頸部所見頸静脈怒張腹部所見圧痛,腹部大動脈瘤,肝腫大下腿所見浮腫神経学的所見心電図標準12誘導心電図T波の先鋭,増高(hyperacuteT),T波の陰転化,R波の減高,ST上昇/下降,異常Q波右側胸部誘導(V4R誘導) 右室梗塞の合併採血(血液生化学検査)心筋バイオマーカー心筋トロポニン,CK,CK-MB,ミオグロビン,心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)血算,生化学,電解質心エコー局所壁運動異常(左室壁運動,下壁梗塞の場合は右室壁運動も)左室機能機械的合併症左室自由壁破裂(心嚢液貯留,右室拡張期の虚脱),心室中隔穿孔(シャント血流),乳頭筋断裂(僧帽弁逆流)左室壁在血栓他の疾患との鑑別急性大動脈解離(上行大動脈や腹部大動脈のintimal flap,大動脈弁逆流,心嚢液貯留),急性肺血栓塞栓症(右房および右室の拡大,左室の圧排像),急性心膜炎(局所壁運動異常のない心嚢液貯留)など胸部X線写真心陰影拡大肺野肺うっ血,肺水腫,胸水肋骨,胸膜,縦隔陰影優先度の特に高いものを下線で示す.〔参考文献4)より引用改変〕