カレントテラピー 32-7 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.7 51急性心筋梗塞の診断と治療667クを低減することができるが,低リスク症例についてはむしろ死亡,心筋梗塞の発現が多いという報告8)も示されており,このように選択した治療法が急性期だけではなく,長期予後にも影響を与えることからも急性期のリスク評価は重要であると言える.『非ST上昇型急性冠症候群の診療に関するガイドライン(2012 年改訂版)』9)では,48 時間以内の急激な症状の進行,20分以上持続する安静時胸痛,肺水腫,新規僧帽弁逆流,Ⅲ音またはラ音,低血圧,徐脈,頻脈,75歳以上,ST変化(>0.05 mV),新規脚ブロック,持続性心室頻拍,心筋トロポニンT, IまたはCK -MBの上昇が認められると高リスク群としている(表2).正常心電図,心筋マーカー正常は低リスク群とされているが,症状がある以上は慎重な経過観察が必要であり,繰り返しリスクの評価を行うことが必要である.Ⅳ ACSの初期治療ACSの血行再建に至るまでの初期治療は,診断,リスク評価と同時進行で並行して行われる.診断やリスクに関わらずACSを疑う場合は必要な初期治療を開始する.1 ベッド上安静,酸素投与安静,酸素投与は抗虚血治療の基本である.ACSを疑う症例での酸素投与は治療開始後6時間は原則全例で行うべきである.酸素投与量は通常は経鼻カニューレまたはフェイスマスクで2?5 L/分で開始し,酸素飽和度が最低でも90%以上を維持するように投与量の調整を行う.慢性閉塞性肺疾患合併例では,酸素投与によりCO2ナルコーシスを生じるため低流量から開始し慎重に流量の調整を行う.心不全を合併した症例で酸素飽和度の維持ができない場合は,状態に応じて非侵襲的陽圧換気(non -invasivepositive pressure ventilation:NPPV)の使用も考慮する.さらに酸素化不良の症例では躊躇せず気管内挿管,人工呼吸器管理を遅れることなく行う.これらの状態を連続的に観察,管理するためにCCUに収容し,連続心電図モニタ,パルスオキシメータ装着も行う.2 ニトログリセリンニトログリセリンは冠動脈の拡張に加え,末梢の動静脈の拡張も得られる.舌下や噴霧による口腔内非心臓性胸痛安定狭心症不安定狭心症非ST上昇型急性心筋梗塞非典型的胸痛労作性胸痛安静時胸痛,心筋梗塞後,糖尿病持続する胸痛ST変化なし陰性陽性ST変化ありST上昇あり虚血性心疾患の可能性低い低リスク中~高リスクSTEMI症状心電図生化学マーカーリスク評価非侵襲的検査陰性退院アスピリン,ヘパリン薬物治療早期保存的治療法陽性アスピリン,ヘパリン薬物治療早期侵襲的治療法血栓溶解療法Primary PCIST上昇型急性心筋梗塞図 ACSのリスクの層別化と治療の流れ〔参考文献7)より引用改変〕