カレントテラピー 32-7 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.7 53急性心筋梗塞の診断と治療6694錠,またはバイアスピリンR 100 mg 2?3錠)を噛み砕いて服用する.アスピリンの死亡率低減,再梗塞率減少の効果は明らかであり10),特にST上昇型急性心筋梗塞ではできるだけ早期に全例にアスピリンを投与する.この際にアスピリンアレルギーの既往には十分注意する.PCIを予定した症例にはstent留置が予想されるため,stent血栓症予防を目的にアスピリンとチエノピリジン系薬剤の2剤併用が推奨されている.かつてはチクロピジンを使用していたが,副作用の少ないクロピドグレルが使用可能となり現在はアスピリンとクロピドグレルの2剤併用が標準である.クロピドグレルはloading doseとして300mgを服用することにより数時間後からの効果発現が期待できるとされるが,その効果には個人差が大きく,またアジア人にはクロピドグレル耐性(CYP2C19代謝活性低下)をもつ割合が20%とされている.このような背景から安定した効果を得るためには600 mgを用いる場合もある.一方で,多枝病変や左主幹部病変が強く疑われ,血行再建法として緊急冠動脈バイパス手術が必要となりそうな症例の場合はアスピリンの投与のみで冠動脈造影を行うことも考慮すべきである.5 未分画ヘパリン出血性合併症などの禁忌がない限りPCI が施行される症例ではアスピリンの服用下にヘパリンの静注を行う.ヘパリンの適正使用量は活性化全凝固時間(activated clotting time:ACT)が250秒を超えるか活性化部分トロンボプラスチン時間(activatedplartialthromboplastin time:APTT)がコントロールの2倍程度になるように用量調整を行うが,初期投与量としては3,000?5,000 単位の静注を行う.発症早期のACS 症例ではヘパリン静注投与のみで再灌流が得られることがあるので,禁忌を確認しACSと診断したら直ちに投与する.ヘパリンの重大な副作用としてヘパリン起因性血小板減少症(heparin -induced thrombocytopenia:HIT)があり,血栓形成から血栓性合併症を生じる.HIT抗体陽性が判明している症例に対するヘパリン投与は禁忌である.ヘパリン使用により血栓症を生じた症例はHITを疑いすべてのヘパリン使用を禁じアルガトロバンへの変更が望ましい.6 β遮断薬近年,ACS,特にST上昇型急性心筋梗塞に対するprimary PCI施行率は高く,さらに本邦におけるPCI施行率は欧米に比しても高い.β遮断薬のエビデンスの多くは近年のPCI全盛時代以前に得られたものが多く,発症早期に血行再建された症例に対するβ遮断薬の予後改善効果については十分な検討がなされていない.ACSの初期対応時に全身状態や心機能の把握からβ遮断薬の忍容性,spasmの関与などを判定することは容易ではなく,初療時からの使用は難しい.また早期血行再建後のβ遮断薬の導入時期についても一定の見解は今のところみあたらず,個々の症例ごとに検討のうえ,投与すべきであると考える.Ⅴ おわりに本邦はPCI施行可能施設が多く存在し,諸外国に比し早期のPCIが可能な環境にある.しかし胸痛患者の早期救急搬送がなければ,その優位性を十分に活かすことはできない.それには行政を含む地域救急医療システムの整備が重要である.ST上昇型急性心筋梗塞でもdoor -to -balloon timeの短縮のみではなく,心機能維持を目的としたonset-to-device time(総虚血時間)の短縮が目標であり,ACSの治療の基本は心機能維持から急性期,慢性期での予後改善が最終目的であるということを忘れてはならない.参考文献1) Fuster V, Badimon L, Badimo J, et al:The pathogenesis ofcoronary artery disease and the acute coronary syndrome. NEngl J Med 326:22-250, 19922) Ambrose JA, Winters SL, Arora RR, et al:Angiographicevolution of coronary artery morphology in unstable angina.J Am Coll Cardiol 7:472-478, 19863) ACC/AHA 2007 Guidelines for the management of patientswith unstable angina/non-ST-segment elevation myocardialinfarction. Circulation 116:e147-e304, 20074) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012年度合同研究班報告):ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版).5) Karlson BW, Herlitz J, Wiklund O, et al:Early prediction of