カレントテラピー 32-7 サンプル

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8 Current Therapy 2014 Vol.32 No.7624Ⅰ はじめにわが国をはじめとするアジア諸国は,欧米諸国と比べ脳血管疾患が多く,心筋梗塞に代表される虚血性心疾患の発症頻度が少ないことが特徴である.しかし,ライフスタイルの欧米化,さらには人口の高齢化に伴い,虚血性心疾患の発症頻度は今後ますます増加することが予想される.本稿では疫学調査/研究を基に,虚血性心疾患の疫学について概説する.Ⅱ 虚血性心疾患の発症率わが国では虚血性心疾患全体の発生頻度の推移をみた研究はほとんどないが,虚血性心疾患のなかで特に重篤な疾患である急性心筋梗塞の発症率を検討した疫学研究がいくつかある.滋賀県の高島町で行われたTakashima AMI registryでは急性心筋梗塞の年齢調整発症率(人口10万対)を1990~1992年と1999~2001年で比較したところ,男性が66.5人から100.7人,女性が18.7人から35.7人と,男女ともに増加している1).山形県で行われたYamagata AMIregistryでは1993~1997年と2003~2007年を比較したところ,男性が42.7人から50.1人,女性が20.7人から18.9人と,男性では増加がみられ,女性ではほぼ横ばい2)であった.宮城県で行われたMIYAGI AMIregistryでは1979年と2008年を比較したところ,男性が18.7人から46.4人,女性が4.2人から9.6人と,男性では増加がみられ,女性では軽度増加といった傾向を示した3).1961年から半世紀にわたって追跡されている福岡県久山町で行われたHisayama studyでは1961~1968 年と2002~2009 年を比較したところ,男女ともに明らかな経時的変化は認めなかった4).また,同研究では虚血性心疾患にも言及しており,近年,女性の虚血性心疾患の発症率は低下し虚血性心疾患の疫学中田智夫*1・池田聡司*2・前村浩二*3わが国では,ライフスタイルの欧米化により脂質異常症や糖尿病,肥満などの冠危険因子は増加傾向であり,それに加え,高齢化社会の影響によって心筋梗塞に代表される虚血性心疾患の発症頻度は増加してきている.実際,わが国のいくつかの疫学研究では,2000年代とそれ以前を比較して,急性心筋梗塞の発症率は,増加はすれども減少はしていない.一方で,急性心筋梗塞の死亡率は低下しており,それは経皮的冠動脈形成術をはじめとした医療技術や医療機器の進歩,救急体制の整備などにより,高度な医療が急性心筋梗塞患者に提供されているためである.今後,わが国ではこの高度医療をさらに発展させることはもちろんのこと,虚血性心疾患を発症させないように,生活習慣病に基づく冠危険因子の予防や管理を徹底することも重要な課題である.*1 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科助教*2 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科講師*3 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科教授虚血性心疾患― 診断と治療の最前線