カレントテラピー 32-7 サンプル

カレントテラピー 32-7 サンプル page 8/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 32-7 サンプル の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 32-7 サンプル

Current Therapy 2014 Vol.32 No.7 11虚血性心疾患の疫学と病態生理62725.4mmHgの低下,30~39歳では男性が7.6mmHg,女性が15.1mmHgの低下を認め,男女ともすべての年齢層で低下していた.一方,高血圧(収縮期血圧が140 mmHg以上あるいは拡張期血圧が90 mmHg以上または降圧薬の服用)の罹患率をみると,女性はすべての年齢層で減少していたが,男性の50歳以上では減少せず,いまだ60%以上の罹患率であった11).降圧治療を受けているものの割合は男女ともに増えており,また血圧がコントロールされているものの割合も増えてはきているが,いまだ30~40%と低く,虚血性心疾患の予防対策の一環としての高血圧の1次予防,2次予防は今後の重要な課題である.2 脂質異常症脂質異常症が冠動脈疾患の危険因子であることは,Framingham 研究で指摘されて以来の確立したエビデンスである.わが国でも同様の事実がNIPPONDATAにて確認されており,冠動脈疾患のリスクは,男性では総コレステロール値160~179 mg/dLを多変量解析におけるハザードを1とすると,200~219 mg/dLでは2.11(95%信頼区間:0.92~4.84),220~239 mg/dL では2.17(95%信頼区間:0.89~5.25),240~259 mg/dLでは3.74(95%信頼区間:1.44~9.79)と,総コレステロール値の増加に伴い,ハザード比も増加する12).これらの結果を踏まえ,わが国のガイドラインでもリスクの程度を考慮した脂質管理目標値が設定されている13).しかし,わが国の血清コレステロール値は年々増加し,1960年には180mg/dL前後であったが,1990年頃には200 mg/dL 前後となり欧米諸国と同程度となった.2012年の国民健康・栄養調査によると血清総コレステロールの平均値は,男性195.3mg/dL,女性204.1mg/dLであり,年次推移でみるとこの10年間では女性は減少傾向がみられるものの,男性では大きな変化はみられていない.また,血清総コレステロール値が240 mg/dL以上の割合も,男女ともに血清総コレステロールの平均値と同様の年次推移で,男性9.8%,女性14.7%であった.この推移は食生活の欧米化を反映していると考えられる.脂質異常症の8 割以上は多くの生活習慣に関連した原因が重なって発症しているため,これらの生活習慣(過食,高脂肪食,運動不足,肥満など),特に食生活を適正に保つことが重要である.3 糖尿病30年前のFramingham研究によって,糖尿病患者は非糖尿病患者と比較し,冠動脈イベントのリスクを2~3倍高めると報告された14).わが国の31,192人を対象としたコホート研究であるJapan Public HealthCenter-based prospective(JPHC)studyでも,境界型糖尿病のハザード比は1.50(95%信頼区間:1.07~2.10),糖尿病は2.38(95%信頼区間:1.57~3.61)であり,境界型糖尿病を含めた糖尿病は冠動脈疾患の発症リスクと関連していることが示された15).しかし,脂質異常症と同様に,わが国の糖尿病の有病数は年々増加しており,2012年の国民健康・栄養調査によるとHbA1c(NGSP)6.5%以上,または現在糖尿病の治療を受けている「糖尿病が強く疑われるもの」は約950万人に達し,過去最多となった.「糖尿病が強く疑われるもの」の割合は,男性で15.2%,女性では8.7%であり,「糖尿病の可能性を否定できない人」と合わせて,男性の27.3%,女性の21.8%が糖尿病かその予備群であることが示された.「糖尿病が強く疑われるもの」のうち,現在治療を受けているものの割合は,男性65.9%,女性64.3%であり,男女とも増加してはいるが,「ほとんど治療を受けていない人」も男性で27.1%,女性では31.3%存在している.糖尿病患者における冠動脈疾患の臨床的特徴として,自覚症状のない無症候性心筋虚血をしばしば認め,冠動脈病変は多枝病変,石灰化病変,びまん性病変など治療が困難な例が多く,糖尿病患者に対してはより早期からの診断,治療介入が必要である.4 喫煙喫煙は心血管イベント発症の独立した危険因子であり,わが国のJPHC studyでも喫煙者は非喫煙者と比べて虚血性心疾患のリスクが約3倍高くなり,心筋梗塞に限った場合では,男性で約4倍まで高くなることが示された16).また,男性の1日あたりの喫煙本数を3つのグループ(1~14本,15~34本,35本以上)に分けて,虚血性心疾患リスクについて非喫煙者と比較すると,1~14本で2.3倍,15~34本で3.0倍,35本以上で3.1倍と,1日の喫煙本数が多いほど虚血