カレントテラピー 33-1 サンプル

カレントテラピー 33-1 サンプル page 24/34

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 33-1 サンプル の電子ブックに掲載されている24ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 33-1 サンプル

64 Current Therapy 2015 Vol.33 No.164Ⅰ SGLT2阻害薬とはナトリウム依存性グルコース輸送体(sodium -dependent glucose transporter:SGLT)はSLC5遺伝子ファミリーに属しており,SGLT1~6までの6つのアイソフォームが知られている.なかでも,SGLT1,2はNa+ -K+ ATPaseで形成された細胞内外のナトリウム濃度勾配を利用して尿中グルコースを再吸収する14回膜貫通型のトランスポーターである1).SGLT1は主に小腸,一部腎臓および気管,心臓などに発現しており,その遺伝子変異によりグルコース・ガラクトース吸収不良に伴う著しい下痢症が引き起こされる.一方で,SGLT2はほぼ腎臓特異的に発現しており,その遺伝子変異は家族性腎性糖尿の原因となることが知られている.原尿中のグルコースは糸球体で濾過された後,腎の近位尿細管から再吸収される.この近位尿細管におけるグルコースの再吸収は,近位尿細管起始部(S1)に多く存在するSGLT2と近位尿細管遠位部(S2/3)に存在するSGLT1の2つのSGLTによって行われる.このうち原尿中の約90%がSGLT2で,残りの10%がSGLT1を介して再吸収されている.SGLT2阻害薬は,このSGLT2に特異的に作用して尿細管におけるグルコース再吸収を阻害し,尿中へのグルコース排泄を促進することにより血糖低下作用を発揮する2).健常状態における尿糖再吸収の閾値は,血糖値でおよそ180mg/dL程度とされている.糖尿病状態では,高血糖に対応するために尿細管上皮におけるSGLT2の発現が代償性に増加しており,その結果尿糖を排泄する血糖値の閾値が上昇していることが報告されている3).SGLT2阻害薬は,この上昇した尿糖排泄SGLT2阻害薬の薬物治療高橋 紘*1・川浪大治*2・宇都宮一典*3*1 東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科助教*2 東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科講師*3 東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授SGLT2阻害薬― 摩訶不思議な糖尿病治療薬本邦では,メタボリックシンドロームを基盤として発症する2型糖尿病が増加しており,肥満と体重の管理が重要な治療上の課題となっている.近年の飛躍的な薬物療法の進歩により,厳格かつ変動の少ない血糖コントロールが可能となりつつある.しかしながら肥満を合併する2型糖尿病に対しての治療選択肢には,特に体重の管理という点で議論が残されていた.今般,ナトリウム依存性グルコース輸送体(sodium-dependent glucose transporter 2:SGLT2)阻害薬が2014年4月に日本で認可された.この薬剤は,過剰なグルコースを尿中に排泄させるといった既存の糖尿病治療薬にはない新しい作用機序を有している.本薬剤は,インスリン分泌増加を介さないため膵β細胞に負荷をかけずに血糖を改善することや,低血糖のリスクが低いこと,そして体重減少効果が期待されることが大きな特徴として挙げられる.本稿では,SGLT2阻害薬を用いる際の,各種糖尿病治療薬との違いを認識したうえでの適応症例や効果,併用療法の可能性について着目し,考察したい.a b s t r a c t