カレントテラピー 33-10 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.10 751019Ⅰ はじめにパーキンソン病(Parkinson’s disease:PD)の症状は振戦・固縮・無動寡動・姿勢反射障害などの運動症状が中核をなし,さらに消化器系・循環器系・泌尿器系症状や精神症状などの多彩な非運動症状が合併する.PDの本態はドパミン作動性神経細胞の減少であり,治療はレボドパやドパミン受容体作動薬(dopamine agonist:DA)によるドパミン補充療法(dopamine replacement therapy:DRT)が主体となるが,神経細胞の変性はドパミン系のみならず,アセチルコリン系,セロトニン系,ノルアドレナリン系などの他の伝達系にも及ぶ.漢方薬にはドパミンそのものを補充する効果は期待できないが,ドパミンの吸収や代謝を改善させ,また,他の神経伝達系に作用することで,DRTに対して補完的効果を期待することができる.本稿では,治療対象をPDの運動症状と非運動症状に分けて,漢方薬が有効であった症例報告や臨床研究を呈示しながら,PD治療における漢方薬の役割と可能性について解説する.Ⅱ 運動症状1 運動症状全般ドパミンの代謝に直接影響を与える漢方薬に,頭痛の漢方薬として知られている川セン?キュウ茶チャ調チョウ散サンがある.川?茶調散にはin vitro においてカテコール-O -メチル基転移酵素(COMT)阻害効果が証明されており,脳内ドパミンレベルを増加させる可能性が示されて* 海老名総合病院附属海老名メディカルサポートセンター内科パーキンソン病の治療─ 変貌する概念と治療戦略パーキンソン病治療における漢方薬石田和之*パーキンソン病(Parkinson’s disease:PD)の治療と関連した漢方薬の研究には,エビデンスレベルの高い臨床試験はなく,その多くは症例報告や小規模な臨床研究である.漢方薬にはPD治療薬としてドパミンを補充する効果は期待できないが,ドパミンの吸収や代謝を改善させ,また,他の神経伝達系に作用することで,ドパミン補充療法に対して補完的な効果が期待できる.PDの運動症状に対しては,川セン?キュウ茶チャ調チョウ散サンに全般的運動機能の改善効果が,柴サイ朴ボク湯トウに姿勢異常の改善効果が報告されている.一方,非運動症状に対しては,胃機能障害には六リッ君クン子シ 湯トウが,排便機能障害には大ダイ建ケン中チュウ湯トウが有効であり,精神障害に関しては,幻覚・妄想,レム睡眠行動障害や行動異常には抑ヨク肝カン散サンが,下肢筋痛による睡眠障害には芍シャク薬ヤク甘カン草ゾウ湯トウが有効と報告されている.しかし,これらの漢方薬には副作用として偽性アルドステロン症,薬剤性肝機能障害,間質性肺炎などの危険性があり,処方に際して注意が必要である.