カレントテラピー 33-10 サンプル

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78 Current Therapy 2015 Vol.33 No.101022抑肝散の有効性を示す報告は多数ある.一方,RLSに対して抑肝散が有効であったとする報告が数例あるが,PDと共存したRLSでの報告はない.3) 衝動制御障害およびドパミン受容体作動薬離断症候群PDを含め,さまざまな神経・精神疾患の経過中に,社会生活上問題となり得る衝動的な行動異常を引き起こすことがあり,これを衝動制御障害(impulsecontrol disorder:ICD)という.ICDによる行動異常には病的賭博,性行動亢進,病的買い物などがある.PDにおけるICDの多くはDAなど抗PD薬服用中に出現し,その治療は抗PD薬の減量である.伊藤らは,経過中に性行動亢進症状が出現し,ICDの治療目的で抗PD薬を減量してもICDが改善しなかった症例に対して,抑肝散の眠前1回投与が著効した症例を報告した18).一方,長期間DAを服用しているPD患者が,何らかの理由でDAを減量した場合に,不穏や悪夢などの精神症状を呈することがあり,これをDA離脱症候群(dopamine agonist withdrawal syndrome:DAWS)という.DAWSの治療の原則はDAの再開・増量である.もしICDの治療目的でDAを減量し,減量の結果DAWSが出現した場合は,DAの増量も減量も困難な状況に陥る.宮地らは,このような状況において,抑肝散の併用でDAWSの出現を抑制しつつDAを減量し,ICDの治療が可能であった一例を報告した19).RBDやRLS,ICDなど,幻覚・妄想以外の精神症状に対する抑肝散の有効性は,いまだ確立されたとは言い難い.しかし,他剤無効例など症例を選べば,第二選択薬として抑肝散は有用と考えられる.Ⅳ 副作用漢方も一般の薬剤と同様に副作用は起こり得る.この総説で取り上げた漢方薬を服用中に出現する頻度の多い副作用として,偽アルドステロン症,肝機能障害,間質性肺炎がある.一般に,生薬「甘草」,「黄オウ?ゴン」を含む漢方薬に副作用が出現する頻度が多い(表).1 偽アルドステロン症甘草に由来する副作用で,低カリウム血症,浮腫,高血圧などを引き起こし,重症の場合は横紋筋融解や心不全なども惹起し得る.甘草に含まれるglycyrrhizinの肝臓での代謝産物である3-monoglucuronyl -glycyrrhetinic acid(3MGA)が,腎尿細管においてコルチゾルをコルチゾンへ変換する酵素である2型11β-hydroxysteroid dehydrogenaseの活性を阻害し,増加したコルチゾルが鉱質コルチコイド受容体に結合することで発現すると考えられている20).一般に1日量2.5g以上の甘草の摂取で偽アルドステロン症が生じやすいとされているが,症例によっては少量の甘草でも起こり得るため注意が必要である.2 肝機能障害漢方薬でも薬剤性肝機能障害はまれではない.肝機能障害を惹起し得る漢方薬は,黄?を含むものが多い.しかし,大建中湯など黄?を含まないものでも肝機能障害は報告されており,何らかの漢方薬を表 各漢方薬の構成生薬および生薬量(g)川?茶調散香附子4.0・川?3.0・?活2.0・荊芥2.0・薄荷2.0・白?2.0・防風2.0・甘草1.5・茶葉1.5柴朴湯柴胡7.0・半夏5.0・茯苓5.0・黄?3.0・厚朴3.0・大棗3.0・人参3.0・甘草2.0・蘇葉2.0・生姜1.0六君子湯蒼朮4.0・人参4.0・半夏4.0・茯苓4.0・大棗2.0・陳皮2.0・甘草1.0・生姜0.5大建中湯乾姜5.0・人参3.0・山椒2.0・膠飴10.0麻子仁丸麻子仁5.0・大黄4.0・枳実2.0・杏仁2.0・厚朴2.0・芍薬2.0桂枝加芍薬大黄湯芍薬6.0・桂皮4.0・大棗4.0・甘草2.0・大黄2.0・生姜1.0抑肝散蒼朮4.0・茯苓4.0・川?3.0・釣藤鈎3.0・当帰3.0・柴胡2.0・甘草1.5柴胡加竜骨牡蛎湯柴胡5.0・半夏4.0・桂皮3.0・茯苓3.0・黄?2.5・大棗2.5・人参2.0・牡蠣2.5・竜骨2.5・生姜1.0芍薬甘草湯芍薬6.0・甘草6.0下線は副作用の原因となりやすい生薬(本文参照).生薬量は1日量を示す.ツムラ医療用漢方製剤添付文書から引用.他社の製剤では生薬量が異なる場合がある.