カレントテラピー 33-10 サンプル

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カレントテラピー 33-10 サンプル

Current Therapy 2015 Vol.33 No.10 89Key words1033SWEDDs(Scans without Evidence of Dopamine Deficit)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院神経内科 向井洋平中脳黒質にはドパミン作動性神経(節前線維)の細胞体があり,その軸索は線条体で節後線維とシナプスを形成する(黒質線条体系).節前線維の神経終末から神経伝達物質として放出されたドパミンを,節前線維へ再取り込みするのがドパミントランスポーター(dopamine transporter:DaT)である.DaTに高い親和性をもつ[123I]β-CIT,[123I]FP-CIT,[99mTc]TRODAT- 1などを用いたSPECT(DaT SPECT),あるいはL-dopaをRI標識した[18 F]-DOPAを用いたPETにより,黒質線条体系の節前線維の機能を可視化できるようになった.なお2015年の時点で,日本国内で保険適用として利用できるのは[123I]β -CITによるDaT SPECT(DATSCANR)のみである.ELLDOPA試験,PRECEPT試験,REALPET試験,PROUD試験,CALM-PD試験といったパーキンソン病(Parkinson’s disease:PD)の多施設共同大規模研究において,PD治療薬の神経保護作用を証明する目的で,DaT SPECTもしくは[18 F]-DOPA PETが評価項目として採用された.これらの研究においては厳格な参加条件が設定され,PDの診断も専門医が行ったが,被験者のなかにDaT SPECTもしくは[18 F]-DOPA PETで線条体への集積が正常である,言い換えれば節前線維の変性・脱落がない被験者が4~15%も存在することが明らかになった.これら臨床診断がPDであるにもかかわらず,DaTSPECT や[18 F]-DOPA PET の所見が正常である患者はSWEDDs と呼ばれるようになった.SWEDDsとはScans without Evidenceof Dopamine Deficitの頭文字をつなげた言葉であり,直訳すると「ドパミン欠乏が画像検査で確認できない」となる.剖検所見の検討から,PDでは発症の4~5年前からすでに黒質線条体系のドパミン作動性神経の変性・脱落が始まっており,その数が正常の50%程度に低下して初めて運動症状が出現すると考えられている.ドパミン作動性神経( 節前線維)が正常である以上,SWEDDsはPDとは異なる病態であり,PDの前段階でもない.今日では,黒質線条体系のドパミン細胞は障害されないがパーキンソニズムを呈するさまざまな疾患,具体的には本態性振戦,心因性パーキンソン症候群,血管性パーキンソン症候群,薬剤性パーキンソン症候群,Dopa反応性ジストニア,脆弱X症候群,ミオクローヌス- ジストニア(DYT11),マンガン中毒などがSWEDDsと診断され得ると考えられている.われわれが日常診療でPDと診断している患者のなかにも,相当数のSWEDDs患者が含まれていると思われる.