カレントテラピー 33-10 サンプル

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8 Current Therapy 2015 Vol.33 No.10952Ⅰ はじめにパーキンソン病(Parkinson’s disease:PD)はMovement disordersの代表的疾患であり,歴史的に運動系の異常を呈する疾患として考えられてきた.しかし,今やPDは神経精神病的側面と多彩な非運動機能異常的側面を有する全身病としてとらえられている(図1).MDSのTask forceもPDを再定義する必要性を論じており,新しい診断基準も出されようとしている1).本項は,変貌するPDの概念について記載をする.大辞泉によれば,概念とは“形式論理学で,事物の本質をとらえる思考の形式を指す.個々に共通な特徴が抽象によって抽出され,それ以外の性質は捨象されて構成される.内包と外延をもち,言語によって表される”との定義がある.PDの概念を考える場合には,PDを特徴づけるさまざまな性質(内包)と,その概念に対応する事物(外延)を整理し,本質をとらえる思考の形式を抽出する必要がある.しかし,PDは慢性進行性かつ全身性の疾患であり,発症年齢や臨床病型も多様で,遺伝性と孤発性があり,根本的ではないものの,さまざまな内科的・外科的治療が病態を改善するだけではなく病像を修飾し,背景病理も単一ではないため,その切り口によって概念も変化する(図1,2).また,まさにその概念は変貌している途中であるため,ただ一つの本質をとらえようとすることは難しい.本項では紙面の都合上,変貌するPDの概念について,①古典的な(運動症状からみた)PD,②PremotorPD,③αシヌクレインを欠くPD,④自律神経不全や感覚系の異常を含めた全身病としてのPD,⑤全*1 名古屋大学脳とこころの研究センター特任教授*2 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学助教*3 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学教授*4 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学教授パーキンソン病の治療─ 変貌する概念と治療戦略パーキンソン病の概念渡辺宏久*1・伊藤瑞規*2・勝野雅央*3・祖父江 元*4パーキンソン病(Parkinson’s disease:PD)は病理学的には黒質緻密層の神経細胞脱落とαシヌクレインの沈着,臨床的にはパーキンソニズムの出現を特徴とする.運動症状出現時が発症であり,その改善は治療における主要なターゲットである.しかし,家族性を中心に病理学的にαシヌクレインを欠くPDもあるため,特に分子標的治療を考えていくうえで背景病理を理解した診断がますます大切となっている.また,近年の基礎と臨床両面に渡る研究の発達は,進行例はもちろん,運動症状出現前から便秘,うつ,レム睡眠行動異常症,起立性低血圧などさまざまな非運動症状が出現することを示した(Premotor PD).病理学的にも中枢から末梢まで異常所見を認めることから全身病としてPDを理解する流れが主流となっている.一部の非運動症状は進行・予後にも関連するため,非運動症状を入れた臨床病型も提案されている.PDの概念は,ダイナミックに変わりつつある.