カレントテラピー 33-10 サンプル

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10 Current Therapy 2015 Vol.33 No.10954なお診断の中核をなすものであり,治療を考えるうえでも重要である.Ⅲ Premotor PD最近の病理学的,臨床的な検討によりPDでは臨床的にパーキンソニズムの出現する前,場合によって黒質神経細胞脱落の始まる前から,便秘,レム睡眠行動異常症(REM sleep behaviour disorder:RBD),嗅覚低下,うつ,起立性低血圧をはじめとする非運動症状を認め得ることが明らかとなった(図3)5),6).PDでは,運動症状の出現時を発症とするため,古典的なPDの診断基準を満たす前に,早期の徴候や症状がある状態を“premotor PD”と呼ぶ(図3)7).“preclinical PD”は非運動症状を含めた臨床症状を欠き,αシヌクレインの沈着を伴う状態を指すが,病理所見以外にその沈着を確認できる信頼性の高いバイオマーカーがない現状では生前診断はできない.Braakは,αシヌクレインの凝集沈着を指標としたPD病変の進展は,迷走神経背側核から始まり,青斑核,橋被蓋,さらには,黒質,扁桃体へ上行進展して運動症状を発現させ,前脳基底部,前内側側頭葉中間皮質,前頭前野,高次感覚連合野,最終的には一次感覚連合野へと上行拡大していくことを子細な病理学的検討から提唱した8).本仮説には当てはまる症例は50%程度との報告もあるが9),運動症状を認める前から非運動症状を認めるPDの病態を説明するうえで有用である.すなわち,便秘では迷走神経背側核,うつやRBDでは橋被蓋などが関連すると考えられる10).臨床的には診断基準を満たすようなパーキンソニズムを認めない嗅覚低下と便秘を伴う症例11)や,RBD症例12)において,ドパミントランスポーターイメージングで集積低下を認め得るとする報告が蓄積されている.またBraakは,腸管粘膜や嗅粘膜から病原体が侵入し,腸管粘膜→粘膜下神経叢→副交感神経節前線維→迷走神経背側運動核もしくは,嗅粘膜→前嗅神経核→中枢神経系といった経路を通じてPDが発症することも併せて仮説として提唱している.最近,胃潰瘍に対する迷走神経離断術を行った症例では,行わなかった症例に比べてPDの発症率が低かったとする研究結果が出ており興味深い13).近年,遺伝性PDの原因遺伝子の発見とそれらの機能解析結果から,PDの発症において重要な病態機序が明らかになってきている.これらの新知見は,従来のドパミンやドパミン補助製剤による補充療法を超え,病態に基づいて疾患の進行を抑制可能とする治療薬の開発につながることが期待されている.こうした病態抑止療法は,神経変性過程のより早期に開始することで治療効果が期待できると考えられているため,premotor PDと呼ばれる段階における超早期診断方法の開発は,病態抑止治療を用いた臨床治験を展開す自律神経不全レム睡眠行動異常症嗅覚異常などパーキンソニズム認知機能低下認知症10年前発症20年後Premotor PD PD-MCI PDD図3代表的なパーキンソン病の自然経過と時間経過からみた概念PD:パーキンソン病,MCI:軽度認知機能障害,PDD:認知症を伴うパーキンソン病